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(12/100)『捨てないパン屋』が捨てたもの

内容紹介

毎日12時間以上働き、食パンのみならず惣菜パンを何種類も作る。売れ残ったらそれは廃棄しちゃう。全国に10,000件あるパン屋さんのほとんどが、そんな毎日じゃないだろうか。広島のパン屋さんブーランジェリー・ドリアンも以前はそんな店舗の一つだった。

著者の田村さんは、ブーランジェリー・ドリアンの三代目。お店を継ぐまでに欧米のパン屋さん行脚をし、モンゴルでエコロジーツアーの企画もしていたことのある「変わり者」。生きているヤギを殺しながら、その生命をすべていただくことの大切さを体感した田村さんは、店を継いでからは「捨てないパン屋」をめざす。

田村さんが選んだ道は、素晴らしい材料を使って4種類のハード系パンのみを焼くこと。惣菜パンはつくらない。これにより従業員は田村夫妻のみとなったが、売り上げは変わらなかったという。そして労働時間も毎日6時間程度となったという。

田村さんが「捨てないパン屋」を作るために「捨てたもの」がある。それは日本的労働哲学だった。

一生懸命に100点のパンを目指さない
クレームに左右されない

パン屋さんの工夫

自営業をやっている方はとくに、「このポリシーではやっていけない」と思われるのではないだろうか。

お客様の要求は高い、応えられないと口コミで客足は遠のく。とくにパン屋さんは、消費者に便利な惣菜系のパンなしにはやっていけないと考えるかも知れない。

私は自営業じゃないけど、ブーランジェリー・ドリアンのようなパン屋さんがやっていけるのはラッキーな面が多いのでは?と思う。ハード系パンというどちらかというとニッチなマーケットで、よい材料を使って顧客を掴む。全国1万件のパン屋さんが、少ない種類のパンだけで、顧客をつかめるとは思えない。

例)葛飾のパン屋さん

もちろんパン屋さん自身の工夫も必要だろう。地元葛飾には、「吉田パン」というコッペパンのお店がある。

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岩手で有名な「福田パン」の流れを継ぐコッペパンに、お客様の要望に合わせてさまざまなものを挟んで提供する。焼くのはコッペパンだけだ。挟むものは惣菜もあるし、おやつ系の具もある。

こういうひと工夫がパン屋さんに必要となっているのかもしれない。

消費者マインド

しかし消費者のマインドもパン屋さんを揺さぶる。

本文にもあるが、いくら良い材料でパンを焼いても、少しの焦げ目にクレームする。
自分の味覚を信じられず、美味い不味いが大勢の意見に左右される。

パンはもともと日本の食事ではないこともあり、10,000店のパン屋さんのほとんどに「これでいい」というパンに対する自信がないのではないか。ブーランジェリー・ドリアンのような自信があれば、消費者に左右されることなく我が道を行ける。

ブーランジェリー・ドリアンにとっては解決策となったこの営業スタイルも、他のパン屋さんにとってどこまで参考になるのかなぁ思いながら読了した。

Shinichi/Miyazakiは個人の日常
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