瀬野わたる

読んだ本の記録。基本雑食です。ケアとか、性とか、科学とか、芸術とか、精神医療とか、禅とか、非二元論とかとかとか。書き物もボチボチやります。

瀬野わたる

読んだ本の記録。基本雑食です。ケアとか、性とか、科学とか、芸術とか、精神医療とか、禅とか、非二元論とかとかとか。書き物もボチボチやります。

最近の記事

2024年Q3期ベスト本【サイエンス編】

サイエンス関係は、数は少ないものの、自分の認識をガラリと変えるような本に出会えた。自分だけでは辿り着けないような飛躍、思考の転換が起こるのは、サイエンスならでは。人類の知識の拡大スピードに、改めて驚嘆する。 疲労とはなにか すべてはウイルスが知っていたヒトゲノム解析はとっくの昔に終わったはずなのに、人類が病をちっとも克服できないのはなぜ?病的疲労の代表格「うつ病」をキーに、人間とウイルス、とくに人間と共生関係にあると言っていい「ヘルペスウイルス」の秘密が詳らかになっていく。

    • 2024年Q3期ベスト本【アート編】

      7~9月は、個人的にとても慌ただしい日を過ごしていたのだけど… 幸いアート(人が作ったもの)関連の読書はとんでもなく豊作で、とても5冊に絞りきれないほど。本に助けられ、それ以上に人に助けられた時間だったと思う。様々なご縁、関わってくださった方々に、本当に感謝です。 酒をやめられない文学研究者とタバコをやめられない精神科医が本気で語り明かした依存症の話約束された名著、というものがあるとしたら、本書はまさにそれ。連載当時からとんでもなく面白くて、次の展開が待ちきれなかったこと

      • 20年前の風俗指南書は令和の時代にも通用するか?

        古本屋にて最近古本屋巡りにハマっていて、絶版になっている本やちょっと昔のエロ関係の本なんかを集めている。 先月、大変お世話になっている古本屋さんで20年以上前の風俗指南書を購入したので、早速読んでみた。ズバリこちら: 風俗ゼミナール お客編 もちろん、この本は女性用風俗をテーマにしたものではない。男性向けに、男性用風俗の利用方法を記した本。 発行は2001年4月20日。2001年というと、2ちゃんねる、iモード、Flashの全盛期といったところ。ブログの黎明期で、日本

        • 2024年Q2期ベスト本【サイエンス編】

          アート編からの続き。今回は、けっこう古い(2020年以前)良著を見つけられて、その点は非常に満足でございます。 笑わない数学愛想笑いでごまかさず、ガチで数学の面白さ、美しさ、有用さを伝える。そんなコンセプトのTV番組の書籍化。素数、無限、四色問題、確率論、ガロア理論。NHKの本気がひしひしと伝わってくる。 ながらくTVというものから遠ざかっていたし、おそらく戻ることもないと思うけど、こんな面白い番組があるなら…と思わせる。公式ウェブサイトも相当ガチ。本書はとくに紙の新品を

          2024年Q2期ベスト本【アート編】

          恒例のベスト本紹介。昨年までは半年に1回の頻度だったけど、今年から3ヶ月に1回に増量してみました。これくらいがちょうどいいかな?今の時点で、もう10冊に絞るのに難儀しているので… そしてもう1つ、いつもはサイエンス編が先なのですが、今回はアート(「artifact=人が作ったもの、人の営み」の意味)編を先に。これは、単純にコチラの方が豊作だった、ということで… 不倫と結婚大物声優、一流料理人、プロスポーツ選手、政治家…叩かれるのは分かっているのに、人はなぜ不倫する? 本

          2024年Q2期ベスト本【アート編】

          伝統性具「肥後ずいき」(昭和初期製造?)に触れてきた話―昔と今―

          もうほぼ表題の通りなんだけど、江戸時代に誕生したとされる伝統的な性具「肥後ずいき」の実物に触れてきたよ。 肥後ずいきの「名前だけは聞いたことがある」という方も多いと思う。「肥後」の名前からも分かるとおり、熊本地方に江戸時代から伝わる性具。僕が見たのは紐状のもので、主にチ○コに巻き付けて使用する。 Wikipediaによると、 らしい。効果のほどは、もちろん分からない…けれど、400年という時間は、単なる偶然で残るには少々長い。個人的には、期待してもいいんじゃないかと思う

          伝統性具「肥後ずいき」(昭和初期製造?)に触れてきた話―昔と今―

          初めてストリップ劇場に行って、理想のダンサーを見つけた話

          明日をも知れぬ芸能ストリップに行こうと思ったきっかけは、昨年読んだ花房観音先生の「女の旅」だった。 花房先生は広島でストリップという「昭和の遺物」と思われている身体芸術にハマる。 もっと言えば、花房先生は若林美保という今も現役のダンサーを見るために広島を訪れたのだけど… (この章は、ありがたいことにnote上で全文が読める。僕の下手な解説より、ぜひコチラを) この文章の美しさと共に、ストリップの「期限」あるいは「はかなさ」が、僕には印象深く残った。 ストリップが10年後、

          初めてストリップ劇場に行って、理想のダンサーを見つけた話

          2024年Q1期ベスト本【アート編】

          サイエンス編からの続き。 アートは美術ではなく「artifact=人が作ったもの、人の営み」の意味。人文系…という言い方は好きではないのですが、まあサイエンス以外のもの、と考えていただければ。これも、5冊に絞るのが心苦しかったほど豊作でした。 戦争と交渉の経済学:人はなぜ戦うのか「人間」にもっとも絶望するとき、というと僕はアウシュビッツや戦争を思い浮かべる。人間の歴史は、戦争の歴史と言っても過言ではないのだけど、その詳細をつぶさに調べると、戦争は実際に起こったものより、回

          2024年Q1期ベスト本【アート編】

          2024年Q1期ベスト本【サイエンス編】

          いつもなら?半年に一回ベスト本をまとめていたのだけど、ちょっと試験的に3ヶ月(四半期)の区切りで。 ネタがあるかな…という一抹の不安はあったのですが、振り返ってみるとまったく尽きることはなく。むしろ、10冊に絞り込むのは心苦しい状況。改めて、いい本との出会いに感謝です。 誰がために医師はいる――クスリとヒトの現代論「つべこべ言わずに読め!」としか紹介できない本があるとしたら、本書はまさにコレ。1人の精神科医が、依存症という同業者からも嫌われる病に立ち向かい、戸惑い、それで

          2024年Q1期ベスト本【サイエンス編】

          2023年下半期ベスト本【アート編】

          サイエンス編からの続き。 アートは美術ではなく「artifact=人が作ったもの、人の営み」の意。上半期豊作だったので、下半期はボチボチ…と思いきや、またまた豊作。5冊に絞るのは、やっぱり無理っぽい…。 あなたのセックスが楽しくないのは資本主義のせいかもしれないセックスは経済的だ。 そして、セックスの価値が高ければ高いほど、実は純粋な楽しみとしてのセックスから遠ざかる。だって、株取引を草野球と同じモチベーションでやってる人なんて、そういないでしょ? ではセックスが「高

          2023年下半期ベスト本【アート編】

          2023年下半期ベスト本【サイエンス編】

          下半期は比較的大著に取り組んだこともあり、読んだ冊数としては上半期ほど多くない。その分、面白さや発見はてんこ盛りで、学びも深かった。 名作や大著は、時間をかけるだけの価値がある。当たり前といえば当たり前だけど、やっぱり「鈍器」を見ると二の足を踏むのよね…そこら辺のハードルをもう少し下げたいと思う今日この頃。 幻覚剤は役に立つのか文句なしのベスト、文句なしの鈍器本。 人の意識・自我とは何か?幻覚剤はそれにどのように作用するのか?進化の中で、キノコはどうやってその成分を獲得

          2023年下半期ベスト本【サイエンス編】

          【ネタバレ】映画レビュー「春画先生」 芳賀編

          前編(弓子編)はコチラ(↓) 前編と同じく、映画を視聴された方向けの文章でネタバレを含みます。その点はご注意を。 以下、ネタバレ注意!!!!!!!(スクロールで本文が表示されます) 芳賀という人物映画のタイトルにもなっている春画先生こと芳賀一郎(内野聖陽)。でも劇中では「春画先生」とはほとんど呼ばれておらず、「先生」か「芳賀」。ここでは「芳賀」で統一しておく。 さて、芳賀というのはどういう人物だっただろうか?ちょっとおさらいしてみる。 周囲との協調性がなく、教授会と

          【ネタバレ】映画レビュー「春画先生」 芳賀編

          【ネタバレ】映画レビュー「春画先生」 弓子編

          基本情報「春画先生」は2023年10月13日公開の日本映画。一応ジャンルはコメディーと言うことになっていて、在野で春画研究を続ける芳賀一郎と、その弟子春野弓子がメインキャラクター。 僕も大好きな春画をテーマにした映画ということで、観てきたよ!役者さんたちの演技がとても素晴らしく、久しぶりに「引き込まれた」と感じた映画。役者さんたちの細かな表情、小道具の懲りよう、そして名作春画の数々。映画館で観られて良かった、と素直に思えました。 以下のレビュー、感想は、映画を視聴済みの方

          【ネタバレ】映画レビュー「春画先生」 弓子編

          団鬼六が吉野家コピペを生んだ? ~思考と静謐~

          珠玉のエッセイ団鬼六先生のエッセイ集「死んでたまるか」は、個人的にエッセイのオールタイムベストに入る名作で、是非多くの人に読んでいただきたい。 その中で、ちょっと気になる内容があったので、長いけど引用してしまう。15章「牛丼屋にて」で団先生は、吉野家では酒を3本しか頼めないので、飲み過ぎる事がないのがいいと述べる。そしてその後に、次の文章が続く。 吉野家ってのはな…何かに似ていると思わないだろうか…?僕くらいの年代だと、真っ先に「吉野家コピペ」と呼ばれるインターネットミ

          団鬼六が吉野家コピペを生んだ? ~思考と静謐~

          2023年上半期ベスト本【アート編】

          サイエンス編からの続き。 アート部門は本当に豊作で、5冊に絞るのは非常に心苦しい…でも、がんばって減らしました。なお、美術ではなく「Artificial=人が作ったもの」の意味とお考えいただければ。 無(最高の状態)僕の精神的な支柱の一つに「禅」があって、自分では多少なりとも知ったつもりでいた。ただ、本書を読むと今まで感じられなかった脳科学・神経科学とのつながりや、仏教の他の経典とのつながりも見えてきて、今までにない腹落ち感があった。 個人的には、3月に少し体調を崩し、

          2023年上半期ベスト本【アート編】

          2023年上半期ベスト本【サイエンス編】

          2023年の上半期は、自分の人生を変えるほどの名著に多く出会えた。幸運も不運も立て続けに起こる…というより、去年から続けてきたことの結果が(あるいは弊害も)、今になってようやく見えてきたってことかもしれない。 昨年と同様(と言っても、もう残っていないんだけど)、サイエンス部門とアート部門(artificial、人が作ったものという意味)で5冊ずつ選んでます。お楽しみいただければ幸いです。 未知なる人体への旅 自然界と体の不思議な関係旅の本が好きだ。そして、生化学の本が好き

          2023年上半期ベスト本【サイエンス編】