星の王子さま1「ボア(想像力の喪失)」

著者が6歳だった頃、猛獣を飲み込む大蛇ボアの話を本で読み、そのイラストを描いた。というところから話は始める。ボアについての説明はこうだ。

〈ボアはえものをかまずに、まるごと飲みこみます。すると自分も、もう動けなくなり、六か月のあいだ眠って、えものを消化していきます〉

6歳であった「僕」は、ジャングルの冒険に思いを馳せ、自分で絵を描いた。それは自身の身体よりも大きな象を飲み込み、象の形に膨らんだボアである。

こどもの想像力は豊かで、おとなが思っているよりも、こどもの見ている景色や、こどもの目に映る世界は様々な様相を見せている。

例えば、横断歩道を渡る時に、‘ 白い部分は安全、黒い部分を踏んだら死ぬ‘など、自分の頭の中でマイルールを作りながら渡る。
おとなにとっては、毎日通っているただの‘仕事に向かう道’であったり‘買い物に向かう道’であったりするが、こどもにとっては、スリルを想像する冒険の道である。

そんな「僕」が描いた、‘象を飲み込んだボア’をおとなたちは‘帽子’かと尋ねてくる。

それで僕は、おとなたちにもわかるように、ボアのなかが見える絵を描いてみた。おとなたちには、いつだって説明がいる。

おとなたちは、最初からおとなだったわけではなく、‘元こども’であるはずの存在。おとなになるにつれて、知識や見聞は広がるだろうが、その代わりに見えなくなってくるものがある。

電気が発明されておらず、未開の場所もそれなりに残っていた昔は、妖怪や怪異が人々を怖がらせたが、電気の発明によって夜が明るくなり、地球上で人類が観測できていない土地や場所はほとんど無くなった。今や人類は宇宙にも手を伸ばしている。

人々はこどもからおとなになるにつれて、ベッドの下の怪物や、抜けた乳歯を金貨に変えてくれる妖精を感じ取れなくなっていく。

著者は、おとなたちに画家の夢を諦め、代わりに数学や地理の勉強をするように言われる。そして飛行機の操縦を習い、世界中を飛びまわるようになる。
様々な人と出会う中で、‘ものごとを分かっている’と思った人には、例の‘ボアの絵’を見せたが、ボアだと分かるおとなは居ない。

大好きな「ボア」「原生林」「星」の話を諦め、そのおとなの分かりそうな「ゴルフ」「政治」「ネクタイ」の話をするとおとなたちは喜ぶが、「僕」は「想像力」のないおとなたちに空虚さを感じている。

「想像」には2つある。

①空想・妄想の類い
②相手について考える

このエピソードでは、‘ボアの絵’の話を通して、
①空想・妄想の類の喪失が語られているが、②の相手について考えることは、このあとの王子さまのエピソードを通して語られる。

つづく

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