煮られた魚が再び海で泳ぐには?
愛情は冷めているのに逃げられず
煮凝り妻の柔らかき枷
冬になると、ふと思い出すフレーズがあります。
煮凝り妻の柔らかき枷
私は30代の頃、4年ほど短歌を詠んでいたのですが、その時期に作った下の句(五七五七七の七七)です。
煮凝は俳句では冬の季語です。
もう20年以上も前のことで、上の句が思い出せない……。
愛情は冷めているのに逃げられず
煮凝り妻の柔らかき枷
このような歌だったかもしれません。
今振り返ると、まったくもって失礼な見立てで、申し訳ないです。
近視眼的だった私には、そのように思えてしまったのでした。
そして、ある時ついに枷からの逃亡を図るのです。
たとえば……の話ですが、
煮られて冷やされて固められた魚が再び自由に泳ごうとしたら、2年の月日と、ベンツ1台分くらいの金は、かかったりするのかもしれません。
思うところがあって、ずっと口にしていなかった煮凝り。
「この冬は食べてみようかな」と、なぜか思っている自分がいます。