言葉は世につれ世は言葉につれ…「けだもの」の逆襲
言葉大好きのライター兼国語講師です。時々言葉に遊んでもらっています。先日は「くだもの」と「けだもの」の兄弟言葉が私の相手をしてくれました。
たとえば、知り合った人と趣味や好みの話になり、「わたし、動物、大好きなんです」と言われても違和感なんてないですよね。やさしい人なんだなぁと思うくらいです。
「わたし、けだもの、大好きなんです」
これはかなり変。笑顔でこんなこと宣言されたら、相手はふつう引くよねぇと思って、なにげなく「けだもの」をググってみると、
4年前にこのようなドラマが放送されていたんですね。知りませんでした。
「人気コミックの実写化」だそうで、「"けだもの男子"たちとのちょっと危険な恋がはじまる♡」とのこと。「花けだ」という略称もあるようで……。
私は言葉をキャラとして見てしまいますから、これは兄(弟?)の「くだもの」に人気で差をつけられた「けだもの」の逆襲ですね。イメージのいい言葉、「花」や「男子」とコラボすることで、好感度アップに乗り出したわけですよね。
乱暴なやつと思ってたのに、雨の日、段ボールの中でミーミー鳴いている子猫を拾って助けるなんて……いいひとだったんじゃないの!
青春ドラマの定番シチュエーションが浮かびます。
「けだもの」は「毛のもの」の昔の言い方が変化した言葉でしたから、「花」と一緒にいる「けだもの男子」は、
こんな愛らしい存在でしょうか?
ということは、
「わたし、けだもの、大好きなんです」
こう語るのも異様ではないことになります。
むしろ、「えええ、けだものがぁ?」なんてドン引きしていたら、「『花けだ』知らないんですかぁ?」と、相手の方から呆れられてしまうかもしれません。
言葉は世につれ世は言葉につれ
言葉はやさぐれたり、かっこよくなったりするもの
ですね。
ライター兼国語講師としては常にアップデートを気にかけておかなければ。