ウロコ狂〜魚編〜
「鱗」という文字そのものの造形にも惹かれるのですが、一枚一枚ポリポリと鱗を彫っていくという行為になぜか筆舌に尽くし難い魅力を感じてしまうのです。
果たしていつ頃からその魅力に取り憑かれているのか…
ということで、根付を創り始めた初期作品からの記録写真を遡ってウロコ狂のへの軌跡を辿ってみようと思います。
●2004年の「ウロコ」
“鯉のぼり”の真鯉と緋鯉をモチーフにした根付。真鯉は立ち姿、緋鯉は寝そべる姿で擬人化し、あえて鯉のぼり風にデザイン化された 「鱗」。
この頃はまだウロコ愛に目覚めてはなかったのか?
■ YOKA Mukaida 根付:2004年 「真鯉」…個人所蔵 「緋鯉」…作者私物
●2005年の「ウロコ」
金魚の中でも憧れの“蘭鋳(ランチュウ)”をモチーフにした金魚根付。
ランチュウのやわらかなフォルムとフワッとした白〜ピンクの色調を表現したかったので、あえて鱗一枚一枚の彫刻はしないシンプルな「鱗」。
「金魚すくい」という題名で、ランチュウをしている様子ですが、「すくい」という言葉を『金魚を掬う』『金魚を救う』の両方の意味に解釈できるようにかけている作品です。
「救われている?」or「掬われている?」のか。。。“血赤珊瑚”で象嵌された小鉢の中の金魚はぷっくりしていて元気そう。
■ YOKA Mukaida 根付:『金魚すくい』2005年 個人所蔵
●2006年の「ウロコ」
黒褐色の真鯉。櫻の花びらを背につけて元気に跳ね上がる姿を根付にしたのですが、デフォルメされた顔部分とは対照的にあえて鱗は一枚一枚毛彫りを施してリアル感を出しています。
鱗の数はザッと数えて約300枚。鱗を彫る楽しさに目覚め、楽しくて嬉々として左刃(ひだりば)をひたすら動かしていた思い出ある作品です。
もうこれは「ウロコ愛」発動しています!
■ YOKA Mukaida 根付:『櫻鯉』2006年 京都清宗根付館 所蔵
↓この作品についての詳細はこちらのブログにてご覧いただけます。
●2010年の「ウロコ」
堂々たる「祝鯛」。おめでたい真鯛を根付にしたものですが、そのウロコの数はおよそ600枚ぐらいかと。
微妙なグラデーションで染め上げた美しい体色を見せるために鱗の線模様はあえて彫らずに仕上げています。
このあたりから「ウロコ愛」から「ウロコ狂」へ変貌…
■ 根付:『祝鯛』2010年 京都清宗根付館 所蔵
この頃から、「ウロコ」を彫るためだけに特化したオリジナルの彫刻刀の試作が始まります。とにかく鱗を美しく正確に彫るための刃物を作っては改良し、また作っては改良を重ね、『ウロコ狂』にますます拍車がかかっていったような気がします。
↓この作品についての詳細はこちらのブログにてご覧いただけます。
●2015年の「ウロコ」
「祝鯛」以来5年ほど“龍の鱗”に夢中?で、しばし“魚のウロコ”から遠ざかっていたのですが、ある日猛烈に可愛い金魚を創りたくなり久々に魚のウロコを堪能した作品です。
尾びれにチャームポイントを置いたデザインなので、ウロコ部分の面積が少ないのですが、鹿角独特の素材感を生かしつついかに金魚のウロコとして違和感なく仕上げるかが課題となった作品でした。
■ YOKA Mukaida 根付:『恋する金魚』2015年 個人所蔵
●「ウロコ」道を極める
こうして改めて振り返ると、彫ってきた魚のウロコは同じ系統のものばかりということに気付きました。虚実含め世の中には、様々な特徴あるウロコを持った魚がたくさん存在しますので、ウロコ狂としてはそれらの魚も根付にして愛でていきたいと思います。
根付師になって今年で23年目、ここに上げた作品の他にも魚の根付をいくつか作っているのですが、昔はろくな記録写真を撮ることが出来ず、恐ろしいほどのピンボケの画像は載せるに耐えられませんのでアップするのを断念しました。
根付ではないのですが、“ウロコっぽくない魚の提げ飾り”の作品画像がいくつかあるのでそれはまた別の機会にご紹介したいと思います。
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