「ご近所履き」の話
先日の投稿を、新年の挨拶と共にFacebookへリンクを張ったところ、嬉しい反響を頂いているmuneです。友だちはみんな応援してくれて、前向きなコメントたくさん頂きました。ありがとうございます。在り来りですが、猪突猛進していく次第でございます。
■超ニッチな角度から入る
皆さんは最近、「ツッカケ」とか「庭(ベランダ)履き」買いましたか?
買ってないですよね?
ぼくも買ってないです。そう、誰も買ってないんです。けど昔、おばあちゃんの家の勝手口とかに置いてませんでしたか?それ履いて軒先でスイカ食べませんでしたか?線香花火的な、しませんでしたか?カカトが無いから楽ちんなんですよねあれ。履きやすい。
あの履物、(現在)ご高齢の方は「ヘップ」とか「ヘップサンダル」って呼んで親しまれていたんですよね。例えばお隣に回覧板を回しにいくときに履いたりとか。商店街へ買い物に出かけるときとか。つまるところ「ご近所履き」ですね。あとは庭で洗濯物干すときとか。もしかすると、台所もまだ玄関の外側にあったかもしれない。1960年代とかのお話です。
(日本全国の軒先)
けど時代が進むに連れ、履く機会が極端に減りました。そして、履く人もいなくなってしまった。「ヘップ」は死語です。オワコンですね。靴の種類もたくさん増えました。そして2000年台には、クロッグ型の「crocs」が登場。猫も杓子もクロックスです。楽だし水にも強いから良いんですよね、クロックス。
作りたいんですよねー。新しいヘップサンダルのブランド。奈良県にはヘップサンダルの生産が盛んな地域があるんです。地場産業ってやつですね。さらに奈良は靴下が有名なので、同じ足元でおもしろいことができそうじゃないですか(*安易)?昔から奈良では草履や雪駄なんかを農家の副業として作っていた方が多かったみたいで。「軽装履き」って呼んだりします。あと、最近リバイバルしている一体成型のゴムサンダル:便所サンダルなんかも奈良県の産地品なんですよ。そういった歴史の文脈にもストーリー性があって興味深い。奈良は日本の日常の足元をずっと支えているんです。
そんな軽装履きも、もはや誰も履いてない。ヘップサンダルなんてもっての外です。当然です。履く人が居なくなってしまったから。極端に履く機会を失ってしまったから。回覧板を"回す"ってなに?友だちに聞いてみても、言葉の意味を誰も知らない。ヘップ...「え?なにそれ?阪急…orz」違います。超需要がないニッチな履物なんですよね。
(違うんですgoogle先生)
■いや、マスかもしれない
ファッションも何事もそうだと思うんですけど、流行ったら二番煎じめっちゃ出てこないですか?クロックスなんですけど、いっぱい類似品が出てくるんですよね。これは批判ではなくて、そういう流れになってるから仕方がないし、無理に抗うことでもないと考えていて。きちんと本物のクロックス買いましたか?300円とか1500円で買ってませんか?それクロックスですか?(てか本物のクロックスって何ですか!?)
そう、ご近所履きは履く機会を失いました。「クロックスみたいなやつ(仮)」に取って代わられたのです。
「クロックスみたいなやつ(仮)」
…あれ?
けどクロックスみたいなやつ(仮)をご近所履きにしてるんですよね?
あれ?そしたら
「ご近所履き」を履く機会は、失ってないんじゃないですか?
なぜなら皆さん全員には玄関があるから。そしてベランダがあるから。
(いやいや、お隣に回覧板なんて回しに行かないし、洗濯物だってデカい庭で干さないよ…)
ではこんなとき、なに履いて出掛けますか?むしろなに履いて出掛けたいですか?
・コンビニへメルカリを発送しにいくとき
・宅配の Amazon が1階に届いたとき
・近所のスタバか蔦屋へいくとき
・近所の居酒屋へ引っ掛けにいくとき
・近所の銭湯でひとっ風呂浴びるとき
・公園で缶酎ハイと Chill out するとき
仕事から帰ってきて、深夜のコンビニへいく。ちょっと時間が許す日は、蔦屋で立ち読みもする。土曜日の午前、散歩に出かけてそのままスタバで作業する。身体は完全にOFFの状態だから、革靴とかヒールは履かないですよね。楽に履けるやつがいい。カカトを"トントンッ"ってしたくない。あと個人的なんですけど、アルル(奈良県の郊外型イオンモール)行くときの足元ってちょっと悩みます。これは服好きに比例して悩ましい気がしていて。お洒落決め込んで行く場所でもないし、かと言って「クロックスみたいなやつ(仮)」もなんだか違うっていう。
(ご近所がない人はいない)
あとマンション住まいの人、玄関のここ(下記画像)めっちゃ難しくないですか?特にインターホンが鳴って慌てて出たとき。あんなに下駄箱や玄関には靴が散乱しているのに、なぜか履くものがない。結果、「自分の玄関は汚れていない聖域だ」という謎のルールよろしく、素足で行っちゃう。
(慌てて出る人の末路)
(そしてこう。)
これはもしかすると、玄関の数だけ需要があるかもしれない。「ご近所履き」を履かなくなったは間違いで、「何か他のモノ」に取って代わられたのでは?という仮説が生まれました。例えば、夏の旅先で買ったまじでどうでもいいビーサンやシャワーサンダルが、ベランダにずっと置かれている。豪雨の日も台風の日も(雨の日も風の日も)ベランダに晒されてカピカピ。だけどそれを履いて日々洗濯物を干している。あと、履かなくなったビルケンやアウトドアブランドのサンダルを、都落ちさせて玄関履きにしたりとか。そしてそして、最終的に相応しい履物がないときは「ビルケンみたいなやつ(仮)」を買って、ことを穏便に済ませているetc.。「あ、これフットサルのとき用に買ったやつだ。これでいいじゃん。」
■生活丸々を自分の価値で埋めたい私たち
最近はライフスタイルにこだわる人、またはこだわりたい人が増えたんですよね。数年前から、お洒落ファッションビルに入ってませんか?「ライフスタイル提案型セレクトショップ」。ファッションにこだわりを持つ人たちは、生活様式全体までをお洒落にしたい、または厳選したいとまで考えるようになりました。そんなライフスタイルをまるごと提案するお店が増えたんですね。
料理や調味料にこだわる人は、お皿の産地もこだわる様になった。調理器具はもちろんのこと、エプロンまで厳選する。ガーデニングのスコップと手袋は王室御用達(*あるか定かじゃない)のこのブランドって決めてる。などなど。金銭感覚や実現性に関係なく、その人の価値観に合わせて自分のライフスタイルを厳選したい憧れがある。結婚式の引出物でもらったWEDGE WOODのティーカップは、自分のライフスタイルに合ってないと、どんなに価値があろうと要らない人が増え始めた。
(有り余るティーカップソーサー)
一方で、市場はそのウォンツをもちろん捉えている。お皿も、エプロンも、スコップも沢山ブランドがあります。靴の業界もご多分に漏れず提案している。ルームシューズもある。フェスで履く長靴もある。けど「ご近所履き」に特化したブランドって?
■あなたは履きたくて履いているのか
話を戻します。ライフスタイルにこだわりを持つ人が増えた。あらゆる生活のシーンの道具にこだわりたい。選択肢が必要です。けどその人に向けた「ご近所履き」ってなにがあるのでしょうか?言い換えると、その今あなたが履いている「クロックスみたいなやつ(仮)」はあなたが履きたくて履いているのかとうこと。こだわりのない人は良いんです。そういった生活スタイルは否定しないし、人によって人生のこだわりポイントは違うので。むしろ手頃感が、条件で高いときもあります。「ご近所履き」にはこだわりゼロとか。全然OKです。言及したいのは、本当はこだわりたいけど自分にしっくり来るのがなかったから渋々「クロックスみたいなやつ(仮)」を履いている人。そんな人が一定層いるのではないかと考えるようになりました。いろんな価値観があります。BIRKENSTOCKは最初から「ご近所履き」専用として買うには勿体無い。気を遣わず履きたいのに手入れが面倒、とか。crocsは楽だけど、デザインや色が今の気分に合わない。これじゃスタバにも(*お嫁にも)行けない、とか。
(マック持ってスタバいく。足元は?)
ちょうどいいやつ。あんまりない気がしていて。
ここ作ります。ちょうどいいやつ。「ヘップサンダル」を皆様の玄関先にお届けします。「ご近所履き」です。よろしくお願いします。