【創作小説】M美、半熟の自我
私には色々な自分が共存している
ある時はスキになるのが男性
またある時はスキになるのが女性
はたまたある時は自分の認識が男性寄りで
スキになるのに男女は関係ない
そして時折あるのが
姿は謎で誰もスキじゃない宇宙人の時
不思議で
でも水が揺れるように自然なタイミングで変わっていく
そんな私は今
母親として世間一般でいう当たり前の家族の営みを送っている
ひとりの人間として
幼少期
私M美は三人姉妹の末っ子としてこの世に産み落とされた。
姉2人とは喧嘩もするが仲は良かったと思う。
ただ末っ子という事だけで違和感を覚える事も多くあった。
父親と父親側の祖父祖母の態度が姉2人と比べ違うのだ。
幼いなりに、人の機嫌や感情の波に敏感だったように思う。
特別姉に愛を注ぐ父方の人達。
それなりにしか視界に入れて貰えない私。
よく覚えているのが『自分は存在しているのだろうか?』という確認を、母親の膝の上に乗って手を光にかざし、透けて見える血潮を見つめることで安心していたものだ。
空想ゴッコは止まらなくて、本当の自分はココには居なくて本当はもっと大切に扱われて不思議な魅力溢れる女の子なんだと、自分で自分を慰めたりなんかもしていた。
普通はあんまり幼少期の頃を覚えたりしていないのだろうけど、こんなにはっきりと覚えているということは、きっと自己形成の失敗のきっかけだったからなんじゃないかな、と今になって思ったりする。
あ、今思い出しても父親から“大好き”とも“愛してる”とも言われた記憶が無いな。
とにかく、私にとって幼少期は満たされなかった記憶が色濃く残るモノだった。
小学生時代
両親が離婚をした。
よくある父親の浮気と価値観の違いによるスレ違い時間の多さからくるものらしい。
流石に自分の親のことでも詳しくは知りたくないので、らしい程度が丁度いいんだろうな。
そんな事で3姉妹そろって母方の田舎に行くことになる。
離婚をきっかけに、元々関わりの薄かった父親という生き物が良く分からなくなってしまった。
私たちは、“いらない”と判断されて捨てられてしまったのか。
父親というものは子供を好きにはなれないものなのか。
幼いながらも既に色々と考えられるようになっていた私は、父親について色々と考えていたが答えは出なかった。
そんなのは当たり前で、父親の心のみぞ知るっということだからだ。
それでも父親というモノを失った穴を埋めるように、年上の男の人が恋しかった。
反動だったんだろう。
大人のお兄さん達にベタベタと甘えるのが上手くなっていった。
そんな事をしても余計に虚しくなるのに。
一生満たされる事は無いのに。
だって、本当はたった1人の父親に甘えたいだけだから。
学校は母方の田舎の小学校に転校になり、少ないながらも友達は出来て遊んだりなんだりしていた。
女の子友達のうち2人とは特に仲が良くて親友と思っていた。
偶然にも2人とも私と同じ“片親”同士だった。
だからなのか、今となってはきっかけは思い出せないけれど。
この2人とは、それぞれとキスをしたり裸で抱き合ったりしていた。
私は不思議な気持ちを感じていて、柔らかくて暖かくて安心する一方でコレは女の子同士でしてはいけないことではないのか、と背徳感にも襲われていた。
それでも2人とのやり取りは続いていた。
当時、好きな人は同じクラスの男の子で足が早くてかっこよくて好きだった。
その好きという気持ちは女の子友達2人には感じなかったので、私は別になにも困ったりはしていなかった。
ただ、女の子同士という体の柔らかさと独特の心の距離感に魅力されていたのは確かだった。
こうして私は私自身というものの存在があやふやなまま、無償の愛というものに懐疑的になり、異性に恋心を抱きながらも同性の魅力に気付いてしまい不安定な状態で思春期へ突入していった。
..........次回。
思春期の私とは。
お楽しみに。