マガジンのカバー画像

短編です。

26
自作の短い小説、童話をまとめました。
運営しているクリエイター

#短編小説

くちばしのある貴婦人#単孔類

◇夜◇  ウピの嗅覚は夜に雑じるいろんな、『廃棄地帯』で起こる悲喜交々を感知した。そこに…

アイウカオ
6か月前
32

月と痩せ犬#墓標

「昏燈街で死体が出たよ」 「だからってそれが伯父貴だとは限らないでしょう」 「碌でもない…

アイウカオ
4か月前
37

ベターデイズ2[ショートショート]

裕季の彼女と付き合うことになった。 「信じられねーよ」 初デート(これは裕季と彼女の)の後…

19

ベターデイズ[ショートショート]

「唐揚げをお腹いっぱい食べて死にたい」 まさゆきくんのために私は何の変哲もないトリの唐揚…

19

氷花姉妹[短編]

❄︎月子の告白 夫には好きな人がおりました。 無口で朴訥と言われる夫でしたが、気の優しい…

35

夏休みのえーえん[掌編]

さっそくファンタオレンジのキャップをひねってシュワっといって、その音でもっと喉が乾いてる…

28

鏡面人魚姫[掌篇]

読書灯を消して夜を招く。 読みさしの頁の白さは直ぐに溶ける。 部屋は次縹色に浸される。寝台の足元の暗がりは広がりを増して、端の方から海に還った。 窓辺には茉莉花の蔓が絡み合って繁茂し、重い緞帳となって内を匿し続ける。 細い蕾の影をなぞって、月光がそっと覗きに来た。 月明かりを吸って白い郡生が息を吐く。 甘い。重い。眩暈を誘う息を茉莉花は。 僕は寝台から這い出して、裸足のまま窓辺に立つ。繊細な切り絵細工のような影が腕に落ちて、皮膚が粟立った。 月光が体温を奪ったようにも感じ

オイスター[短編]

 雪が降って、閉じ込められて、ほんとうの親族が続々とやってくる。               …

32

One Moment [短編]

書物にとって“目”とは何か?   男は満ち足りていたから寡黙だった、と云うのはぴったりく…

26

ドッペルゲンゴ郎[短編]

JR横須賀線の構内で急行待ちをしていると、向かいのホームにおれとよく似た男がいた。 まず、…

39

鬱花 [短編]

 歩けども歩けども、右から左から百合の花が押し迫り、いよいよ怖くなってきた。振り返れば、…

26

鍵~episode3~〔短編〕

////14歳//// 音楽室で昼食をとることが許されているのは、吹奏楽部員だけだ。 食べ終わって…

19

鍵~episode2~〔短編〕

////12歳//// 父がなぜ怒っているのか分からなかった。 私の本棚から抜いた本を、次々と床へ…

15

鍵~episode1~[短編]

誰にも  見せたくなかったんだ 誰にも 触らせたくなかったんだ たいせつなものほど  損ないやすいのは どうして?  鍵をかけて  それっきりの箱が 心臓のとなりにあるよ  失くした鍵を これから  探してみようと  思ったんだよ ////5歳//// 「ねえ、それちょうだい」 とゆみちゃんに言われて、わたしはいいともいやだとも言えず、靴の先で砂をジャリジャリ集めて散らした。 「じゃあ、見せてよ」 とゆみちゃんはわたしの手から、銀杏の葉っぱをとろうと