璦憑姫と渦蛇辜 終章「海神(うみがみ)」③(完)
高熱の硫酸の吹き出すのは水の底、地の割れ目だ。水の圧は途方もなく、ひたすらに冷たく、海雪が音もなく降る処。光のない死の世界もまた海である。
そこへ深海の鮫が集まってきた。その目の中に磯螺がいる。新しい真海の王の誕生の報は瞬く間に八十諸神の間を駆け巡った。
いと美しき王であると。
腰まで届く御髪は自ずから発光するように白く、比類なく美麗であると。厳かな眉目に憂いの影が落ち、海底の深淵よりも暗い瞳は冥府を従えるものの証。
威容を放つ体躯に足りないものはひとつもなく、手にした