天使が教えてくれたこと
NPO法人『near』
あなたの近くに、あなたのそばに、誰にでも寄り添える心の拠り所。
医療的ケア児や重症心身しょうがい児と、その家族。当たり前のように同じように、この地球で、暮らしやすく生きやすい地域社会創りを目指しています。
NPO法人『near』代表:加藤亜里沙さん
2014年4月、亜里沙さんのもとにやってきた天使は、5万人に1人といわれている4番染色体異常をもって生まれました。
そんな希帆乃ちゃんの物語と、亜里沙さんの人生の一ページを紹介します。
当時、第二子を地元で産むと決めていた亜里沙さん。
里帰り出産を希望する方を診ている個人院に通院していたのですが、そのうち、お腹の中の赤ちゃんがあまり成長しなくなり、念の為大きい病院にかかるよう奨められました。そのとき担当してくれていた医師が、お子さんを病気で亡くされていたこともあり、用心して診てくれていたそうです。
そして、検査の際、赤ちゃんの腎臓が見当たらないことや、口唇裂などが確認され、さらに染色体異常の検査を受けることになりました。
その頃すでに中期堕胎するにはギリギリだったのですが、亜里沙さん自身の中に産まないという選択肢は無く、「これから産まれてくる子にしてあげられることを考えよう」と、リスクもある上での選択をしたのでした。
そのため、お腹にいる赤ちゃんの染色体異常が分かったときも、出産に対する迷いはありませんでした。
Q. 実際に出生前診断を受けてどうだったか
支えてくれた存在
そんな亜里沙さんを支えるのはいつも家族の存在でした。
「もし病気があるなら、その心構えをして迎えてあげたい。」
検査を受ける後押しになったのは夫である栄作さんの言葉。
栄作さんは、5人きょうだいの長男であり、加藤家は今じゃ、お父さん、お母さん、そして、5人のきょうだいとそのまた家族といった、大ファミリー。
亜里沙さんは、そんな家族の明るさにもたくさん支えられたのです。その存在が不安に負けず、決心できた大きな安心材料だったのかもしれません。たくさんのあたたかい人たちに囲まれる姿から、亜里沙さんの強くて優しい人柄が伝わってきました。
そして、長女・希乃羽ちゃんもそんなファミリーの一人。
いつも希帆乃ちゃんのそばで見守ってくれるお姉さんです。希帆乃ちゃんを眺めるその眼差しは、本当にあたたかくて、優しくて、愛そのものでした。妹の体調が不安定な時は、いつだって「希乃羽は大丈夫だから」と、希帆乃ちゃんを優先してくれたのです。その想いに、亜里沙さんは何度も助けられてきました。
今伝えたいこと
亜里沙さんは現在、子育てに生きがいを感じており、産まなければよかったと思ったことは一度もありません。
しかし、彼女の周りには、お腹の子を産まないという選択、出産したことを後悔しているお母さんもたくさん居たといいます。
病気をもっている子の預け先がなく、必然的に仕事を辞めざるを得ないなど、自分の人生では無く、介護者としての人生になってしまう人が多いと亜里沙さんは日々感じているのです。
亜里沙さんは、環境を別々にすることで、特別な存在のようになってしまうことにいつも違和感を感じています。
医者からは、2歳まで生きられたら十分と言われていた希帆乃ちゃん。現在9歳で学校にも通っています。
簡単に人の命の長さを判断してしまうことの重大さを感じつつ、彼女の幸せ溢れる姿に、ひとつのかけがえのない家族のカタチを教えてもらったような気がします。きっと、その人たちにしか創れない家族の在り方がこの世の中には数えきれないほど存在するのでしょう。
『near 』という存在が、すべての人がもっと暮らしやすくなるような世の中をきっと創っていってくれるはず。