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How to Make Millions Before Grandma Dies(The Chinese Family)を観て~老後と死の悲壮感と残酷さと美しさ~




この映画に、これほど考えさせられるとは思いもしなかった。

<簡単なあらすじ>



舞台はタイの都市部。町の中心部に家を持つ老母は、末期の癌と申告された。
彼女の息子と孫たちは、彼女の先が長くないことを知り、どうにかして自分たちが遺産を譲りうけたいと、いうなれば偽りの親孝行を行う。
堅苦しく、まるで昭和の頑固おやじのような性格の祖母は、子供や孫たちにとって敬遠されがちの存在だった。
主人公はその老婆の孫にあたる。彼も最初は祖母に対して、甚だ好意など抱いていなかっただろう。しかし彼女の死の先にある遺産を求めて、一緒に暮らすようになり率先して介護を行った。
この映画では、彼女の病状の進行とともに、「老婆と主人公の関係」、「他の家族同士の関係」、「主人公の成長」が描かれている。

<感想>


① 偽りの孝行の残酷さ


作中の老婆は、愛し愛されるべき家族たちに遺産目当ての偽りの孝行を向けられる。
みな遺産のコトばかり。主人公でさえも。
でも人間とは気色の悪い生命体で、時にカネが理性や道徳、家族に対する愛さえも上回る。
先が短い老人たちに向けられる遺産目当ての偽りの親孝行は残酷だ。もし私がその偽りの孝行を向けられる立場になったのなら、、、
想像を絶する、寂しさと悲しみの念を抱くことになるだろう。
こうした遺産目当ての偽りの孝行は世界中どこにでも存在するだろう。
私の家族でさえも。
死を見据えて、カネのことを考える。
もし死んだら誰が相続するの?税金は?兄弟の配分は?
そういった負のオーラがある話題はどうも苦手。
でも全家族がゆくゆくはこの話題に取り掛からなければいけない。
死と向き合う。今のうちから想像しておかなければ、、、
家族の死とはどういうものなのか。


② 人生における哀と楽の相対性


老後の祖母は寂しさを抱えて生きてたように映されていた。
子供たちは、独立してあまり実家に顔を出さない。
夫に先立たれ、いつも孤独を感じている。
そのうえ、偽りの孝行を向けられている。
しかし、過去の回想では家族の楽しそうな思い出話がよく出てきた。

人生というものは若いうちに、楽しみがどっと押し寄せて、相対的に悲しみがあとからやってくるものだと感じさせた。
光があるところに影があるように
人生も同様に喜びと悲しみの相対性を帯びているのではないだろうか。


③愛が愛を生むということ


最終的に、主人公の遺産目当ての祖母への偽りの愛は、本物の愛に代わっていった。
その根本にあったのは祖母が心から家族のことを愛していたから。
祖母は孫のために幼少期から、口座に預金していた。そのことを祖母の死後に知った主人公はその預金を、祖母の夢だった大きい墓の購入に使用した。
遺産目当てだった孫が、お金を墓のために使用したのだ。
そこには祖母への本当の愛があった。
祖母がささげてきた家族への愛は、死後に帰ってきたのだ。
愛は愛を生む。
そこがあらわになる死とは忌むべきことではなく、美しいことなのだと。
全ての物事の、始まりと終わりには美しさが横たわっている。
日の出と日の入りのように、、、、、

ひとつひとつのシーンにこだわりが表れている。
タイの日常が美しく描写されていて、ストーリだけではなく映像作品としても実に素敵な映画であった。

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