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宇多田ヒカルの優しい毒【BADモード】

せっかくサブスクに登録してるのに世の中の音楽の流行に乗れてないなあなんて思って、日本でいちばん聞かれているプレイリストの曲をテキトーに眺めて、テキトーに再生してみる。何気なく選んだそんな音楽が、人生のサントラになっちゃう時ってありますよね。

21歳女子大生、宇多田ヒカルに完全にやられました。イヤホンから流れてきた不意打ちの曲の歌詞に、身震いをする。
「あ、この歌わたしのこと歌ってる」

今回はそんな、わたしがずっとリピートしている危険な楽曲3曲について書いてみようと思います。

[Track2]君に夢中

2021年11月にリリースされた宇多田ヒカルのアルバム、「BADモード」の2曲目をかざる「君に夢中」。
禁断の恋に眉根を寄せながらもその口元を柔く微笑ませる、恋煩いをどこかご機嫌に歌った1曲。
この曲では、相手に夢中で絶対的運命を感じているし、相手が人生における唯一の存在であることを確信しているのに、同時にその恋が叶わないことを胸の奥でしっかり受け止めていて。
好きな人をたまらなく愛しく思う瞬間ってすごく幸せなのに、なんでこんなに悲しいんだろうって気持ちをすごく甘美に歌っているんです。

”来世でもきっと出会う
科学的にいつか証明される”

このフレーズがすごく大好きなんですけど、いやもうそれな〜〜〜〜〜〜って、心の中で全力で共感しちゃうんですよ。
好きな人って因果を感じてしまう。視線の感触、肌触り、全てが特別なの。

”ここが地獄でも天国
バカになるほど君に夢中”

ここも大好きです。報われない恋をしている時ってもう開き直って
「この人を好きでいる時間を大切にしよう、好きになったこの気持ちを慈しもう」
って思うんです。その人の存在は幸せそのものだから。だけど、何回踏ん切りをつけても唐突に現実に方を掴まれて、途方もない絶望を感じる。
天国は地獄があってこそ存在する。
涙を流しながらぬるい一時の幸せに頬ずりする、そんな恋心を余すことなく描写するとんでもない楽曲なんです。

[Track3]One Last Kiss

”はじめてのルーブルはなんてことなかったわ
私だけのモナリザ
もうとっくに出会ってたから”

3曲目はこんな歌い出しで始まるんですけど、えっっぐい。この歌詞やばすぎませんか?笑
なにがどうやばいかとか説明するのが野暮だなって思うくらい、痛烈なワンフレーズだと思うんです。
相手という存在に対する絶対的自信。底無しの愛をこの歌詞から感じずにいられないの。

”もういっぱいあるけど
もう1つ増やしましょう
Can you give me one last kiss?
忘れたくないこと”

これはわたし的解釈なんですけど、この歌詞って「忘れたくないこと」を増やすんじゃなくて、「最後の恋」をもう1つだけ増やしてみない?ってニュアンスに聞こえるんです。
これまで、人生最後の恋と思えた恋をしてきたとしても、そんなことは無かったことにしてこの恋を最後の恋にしちゃわない?って。
報われるか報われないかはさておいて、今を最後にしちゃおうよって、静かに誘ってる感じ。

シンプルに悶え死ぬ

また天国のような地獄を繰り返そうとしている、静謐な愛欲。けしからん、めっちゃ好き。超わかる。

[Track4]PINK BLOOD

”私の価値がわからないような人に
大事にされても無駄”

3曲目に関してはあんまりとやかく言わないです。とにかくこの歌詞がやばい。
このフレーズ初めて聞いた時冗談抜きで大号泣しました。宇多田ヒカルの曲を聴いて泣くのはもっと先の未来だと思ってたのに、あれ、おかしいな。思い描いてた21歳と違う。

この3曲を初めて聴きおえるころには、ちょっと放心してました。
誰かを好きになると愚かなほど一途になってしまったり、歳不相応に深く愛情を抱いてしまうタイプ。
宇多田ヒカルの恋の歌は、どこか冷たさを持っているのにその奥では火種が細くくすぶり続けてて。
滾ることはないけど、じっとりと体を犯す愛。
相手を渇望はしないけど、決してさめないほとぼとり。
そんな愛をこれでもかというほど的確に表現してて、とんでもないアーティストなんだなって。
それと同時になぜだか
「ああ、私まだ生きてけるわ、どんな困難も食らいつくしてやろう。」
そんな無敵な気持ちなれたんです。

報われなかった恋の行く末は

好きな人が自分を好きになるなんて奇跡に近くて。
素直な女の子がいいなんて言うけど、恋心に素直に従ったらそれは禁忌を犯すことになるなんてよくあることで。
心が疼いてたまらない相手の愛する人になれないこと、なろうとしてはいけないことが歳を重ねると増えてくる。
悲しいなあ、好きってこんなに悲しい感情だったっけ。そんなことしてるうちに、どんどん嘘をつくのも傷つくのも、傷つけるのも上手になっていく気がして。
だけど宇多田ヒカルの楽曲を聴いて確信したんです。

愛しいひとに選ばれなかったら、その先に残された道は1つだけ。
それは、愛しいひとの忘れられない人になること。

優しい毒のような音楽を聞きながら、新しいアイシャドウをまぶたに纏わせ、ちょっと強くなった気がする私のお話でした。

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