どこからがパワハラ加害者?指導者に求められるコミュニケーション能力とは
企業がパワハラ予防・解決するための取り組みを実施しているのにも関わらず、パワハラ被害に関連する相談は年々増加している。
そもそもどこからがパワハラなのか?
社会で働いている限り、自身が定義を知っておくことは、保身や加害者及び傍観者にならないための対策となるだろう。
パワハラ行為は、以前に比べて業務との関連性が高いものが増えている。仕事を進める過程で発生するため、加害者が指導のつもりで意識せずパワハラ行為に及ぶ行為も少なくないという。
このような無意識のうちにパワハラ行為をしていた、という加害者が存在するのは、国民全体としてそもそもパワハラとは何かという共通理解が乏しいからだろう。
パワーハラスメントの概念
厚生労働省の報告書によると、以下の1⃣~3⃣の要素をすべて満たすものを職場のパワハラの概念と整理している。
1⃣優位性を背景に行われること
2⃣業務の適正な範囲を超えて行われる
3⃣身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害する
パワハラ行為は6類型に分けられる
パワハラ行為は以下の6つの行為類型に分けられるという。
①身体的攻撃
殴打、足蹴りをする。
②精神的な攻撃
人格を否定する発言をする。
③人間関係からの切り離し
意に沿わない社員に対して仕事を外し別室に隔離、自宅研修させる。
④過大な要求
肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業の任命をする。(就業規則の書き写しなど)
⑤過小な要求
退職を目的に誰でも遂行可能な単純業務を行わせる。
⑥個の侵害
職場内外で継続的に監視する。
ただし、何をもってアウトとなるかの具体的な境界線は微妙な状態だ。
こうした事態を受けて、今年3月、政府は職場でのパワハラ防止措置を企業に義務付ける法案を閣議決定。
今後20年度の施行にむけて、なにがパワハラに当たるか、という具体的な例を指針で示す方向だ。
法律が施行されれば、パワハラ対策は企業にとって自主的努力ではなく、義務となる。適用範囲は社内の人物に限らず、取引先や関係会社も対象となる。
最近のパワハラの傾向と対策
明確なパワハラは少なくなってきたが、陰湿なものは多く、何かしらのルールを作り、応じない人を排除する傾向がある。
パワハラが蔓延する原因として、部下の気持ちが読めずに上司がコミュニケ―ションを取るのに苦労したり、忙しさに追われてコミュニケーションが不足していること、が挙げられる。
全般的になんらかのお互いのコミュニケーション障害によって引き起こされているともいえるのではないか。
会社に従えば給与が保証されるという取引は成立しなくなった。従来のように、会社に身を捧げる意識も一般的ではない。だから、一方的に考えを押し付けることは今の社会では通用しないのである。
コミュニケーションには多くのレパートリーがある中で、
以前は部下に対して「命令する」、「叱る」、「強制する」といった指示的かつ他律的な手段に頼りがちであったが、多様な価値観を持つことが良しとされる現在では、「助言する」、「提案する」、「議論する」など、部下から情報を取り入れる姿勢を持つ、非指示的かつ自律的なコミュニケーションを行わなくてはならない。
指導のつもりでも、パワハラと認定されれば、企業に優秀な人材は集まらなくなり、経営リスクは確実に高まる。
今後、法律が施行されれば、指導者の部下に対するコミュニケーション能力はさらに求められるだろう。
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