サマンタ・シュウェブリン 『救出の距離』 : 「超自然」を超える「日常に潜むもの」
書評:サマンタ・シュウェブリン『救出の距離』(国書刊行会)
どう紹介すればいいのか、なかなか悩ましい作品である。いい作品であるのは間違いないのだが、当たり前のエンタティンメント小説ではないから、それを期待して読むと、きっと裏切られることになる。かと言って、いわゆる「純文学」的な作品ではない。形式としては「幻想小説系ホラー」とでも呼ぶべき作品なのだ。
そうした「内容」を扱いながら、「筆法(書き方)」は極めて「文学的」なのである。しかも、その筆力は確かだから、作者が文学の世界