樋口毅宏 『タモリ論』 : 信仰を欲する、無神論者の屈折
書評:樋口毅宏『タモリ論』(新潮新書)
タモリには興味がない。そんな私が本書を読んだのは、もっぱら、著者の樋口毅宏に興味をもったからだ。
小説家である樋口毅宏の最近刊『中野正彦の昭和九十二年』が、今どき珍しくも「回収」されてしまった。この作家は、実在の人物や実際の事件を作中に取り込むことで、一種独特の「奇妙なリアリティ」を持つ作品を書くようなのだが、この小説に中では、昨年(2022年)7月に発生した、「安倍晋三元首相殺害事件」を「予言する」かのような内容が含まれていたらし