【仕事日記#7】職場で干されて見つけた"仲介者のオアシス"
ひょんなことから、ボスに「お前が売り上げを落とした犯人だ!」と決めつけられ、急に会社勤めが空虚なものになりました。
もちろん冤罪だし、僕の個人目標は達成率200%とか超えてたんですけどね。うちのボスは、気に食わないヤツがいればたとえ数字を残そうが斬るエモーショナルな人なので、争うだけ損なのです。
誰とも関わらず、黙って仕事しよう。
そんな非生産的な決意を固めかけた時、僕はある集団と出会います。
それは、僕と同じく理不尽に日陰に押し込められた民たちでした。
●ボスに現実をつきつけた罪(事実陳列罪)
●ボスの指示に首をひねった罪(反逆罪)
●ボスより人望・スキルがあるところを見せてしまった罪(名誉棄損)
など、様々な罪状で囚われた有能なスタッフたちが、牢獄の隅で膝を抱えていたのです。
「ひどいですよね、nemuさん何もしてないのに」
悟ったような笑みを浮かべる彼彼女ら(4人)は、なんと全員が僕と同じくMBTI”仲介者”。いずれも業務改善を目指して奔走していたところを、「余計なことをするな」とボスに粛清されたみたいです
変な気を回して、私の調和を乱すな。
ボスは事業部を良くしたいのではなく、自分の好きなようなカタチにしたいだけなのです。日々「売上がー」とはいいますが、それは目的でなく、あくまで人を気持ちよく叱りつけるための手段だと。
僕は、気づきはじめてしまいました。
新たなコミュニティと出逢った僕は、日々彼らと議論を交わすようになりました。
驚いたのは仲介者集団の聡明さです。みんなロジカルで、他人のアイデアを否定しない。そして誤解を恐れず言い加えるなら、一定水準の学歴を備えていました。パワー不足は否めませんが、出てくる意見はどれも具体的かつ建設的なものばかりです。
それはいまの事業部に足りない要素そのもの。
上層部は全員が”肉食・物理攻撃タイプ”すぎるのです。
指示は「まかせた、いい感じにやって!」としかいわず、何度も同じ質問を浴びせてくるものたち。さすがに上がこんな人ばかりだと、新しく入った人たちは混乱してしまいます。
ずさんな管理体制、ニーズより利益を考えた販売手法、失われた心理的安全性。今まで新参者だからと目をつぶってきた事業部の粗を冷静に見つめた時間でした。
「いびつな体制が続いて良いはずがない」
ガリガリの草食獣たちは昼に死んだふりをして、夜にはひっそりと理想の世界を語り合っていました。
僕ららしく、ゆっくり、まったり――
のはずが。
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年末のある日、仲介者の群れから一人の青年が飛び出し、果敢にもボスに挑んでしまったのです。
事業部内でもイケメン担当としても知られる彼は、仲介者軍団の中でも最も繊細なタイプ。国家資格をもつ有能な人材だったため、来季の新事業に向けて(罪人ながら)ボスの秘書的な役割に抜擢されたばかり。
※この辺『ショーシャンクの空に』を想像してください
しかし、だからこそ間近でボスの横暴を見続けることになり、義憤にかられてしまったのでしょう。
事ももあろうか、ボスに対して「業務改善書」を提出したのです。
もっともロジカルで、もっともテクニカルで、もっともフェティッシュなやり方で。
「あ、そう。僕は君の100倍は分かってるから。嫌ならどうぞさよなら」
ボスはそんな言葉を皮切りに彼を完膚なきまでなじり倒し、勝手に異動手続きを進め、あえて豪華な送別会をセッティングして、花束を用意して、あげく贈呈の役回りを僕に任命するというサイコパスムーブを見せました。
お前らの考えはわかってるぞ、とでも示すように。
あまりの無慈悲さに
「この人はある種有能かもしれない」
と逆に一目置いてしまったのも事実です。
こうして草食獣の角はへし折られ、オアシスはあっけなく消えたのでした。
大企業管理職、殺傷能力(だけは)ヤバイ。