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フーコーの振り子に乗って


振り子が揺れている。白く発光する球体が目の前を左右に横切り続けていた。周囲は暗い。首を動かそうとしても、まったく動かない。限られた視野の中で際立つのは、行ったり来たりを繰り返す光の球だけだった。

小さなミスで、様々なものを犠牲にした。母国が莫大な税金を費やして造り上げた宇宙船。勇敢な仲間達。宇宙空間での実験で開発できるはずだった薬。地球にもたらすはずだった豊富な資源。

私は諦めるという最後の任務を放棄し、故障した緊急脱出装置に乗り込んだ。しかし、結局地球に戻ることはできないようだ。最後の任務を果たす時が来た。

振り子の球が、だんだん私に近づいているような気がする。還りたい。どうしても還りたい。還りたいよ。還りたいんだ。還らせて。光の塊が、私に訴えかけてくる。視界が白くかすむ。



数十年前のデータがたっぷり保存されているチップを見つけた。宇宙センター内の手の空いている職員全員で、だらだらと倉庫整理をしていた時だ。もう紛失したと思われていたお宝記録。見つけた瞬間は、奇声を上げて喜んだ。

ワクワクしながら、急いでそのチップの情報が再生できる機材のある場所に移動する。完全に倉庫の片付けを忘れた記録マニアたち数人で、古いモニターに釘付けになった。

先輩たちの雄姿。数百年に及ぶ宇宙開発の貴重な歴史的瞬間の映像。興奮していると、いきなり画面が白くなった。ほんとうに微かな、人の声。音量を最大限にする。

「還りたい。還りたい。還りたい。還りたい。還りたい。還りたい……」

抑揚のない言葉が延々と繰り返される。騒いでいた同僚達は一斉に静かになった。狭い部屋の中に響き渡り続ける男の声。恐ろしくなり、停止ボタンを押す。

「ただいま」

耳のすぐ後ろで澄んだ高い声がした。


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