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月と地球のペリドットパフェ
煌々と光る水の球。
暗闇に映える地球の青い光は、月の住民にとって神秘の象徴だ。特に、今日のような満地球は。
誰もが地下コロニーの外に出て、満地球を鑑賞している。もう十分鑑賞した私は、地下コロニーの出入り口であるハッチを開けて、自分の部屋に戻った。
満地球の日には、普段控えている甘いものを食べても良い日にしているのだ。今回は、あの地球をイメージした鉱物パフェを作ろうと計画していた。材料はバッチリ揃えている。
深い緑色と光沢が新鮮さを物語っている。良いパイロキシンが手に入った。細かく砕いて、小さいボウルに入れておく。
次は、乳白色のプラジオクレース。すでに粉末状になっている。水を加えて、空気を含ませるように混ぜる。ふんわりしたクリームができた。
さて、主役のカンラン石に取りかかろう。クリアな黄緑色の球体。ピカピカと光っている。このカンラン石で、あの地球の陸地を表現したいのだ。
地球は青いと表現されがちだが、正確には青緑色と言うべきだろう。地球の細やかな緑色も美しいのだから。
さっと水洗いして、球体を半分に割る。ああ、綺麗に割れない。慎重に、慎重に。
最後の材料はイルメナイト。艶のある黒色の鉱物。ビターな風味がたまらない。細かく砕いてプラジオクレースのクリームに混ぜる。
よし。材料の下ごしらえは完了。後は楽しい盛り付けの工程だ。
この時のために、じっくり選んで購入した大きなグラスを置く。一番下には、濃緑のパイロキシンを。そして、イルメナイト入りプラジオクレースのホイップクリームを多めに。さらに、カットしたカンラン石を敷き詰めて。
この工程を三回ほど繰り返し、美しいグリーンの地層を描き出す。仕上げのカンラン石の配置はどうしようか。さっきの満地球を思い出す。ぽっかり浮かんだエメラルドグリーンの球。
半球状のカンラン石を二つ持ち、切断面同士を合わせて一つの球に戻す。そして、少し切断面をずらして、グラスの縁に沿うように並べていく。白いクリームがカンラン石の黄緑色で隠れていく。
真ん中部分にはクリームを高く盛り、クリームの頂上にカンラン石とパイロキシンを少し乗せた。完成。
満ちては欠け、欠けては満ちる地球の動きを、カンラン石の輪の配置で表現してみた。うん、不器用な自分にしては、なかなか良い出来ではないか。
「いただきます」
さっそく柄が長めのスプーンを手に取って、カンラン石とパイロキシンとクリームをすくい、ほおばる。甘い。しかし、後味は爽やかだ。
もしかすると、地球もこんな味なのかもしれない。
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