[ネコ解説]#2 ビビンバは幸せを呼ぶ食べ物だったという話
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今回は、日本でもよく知られる韓国料理「ビビンバ」を扱ってみました。
▲最近、韓国最大野党の党首が30代の若者に
変わった。
あまりにも若いため、政界の重鎮たちも多い政党で
うまく舵取りができるか、心配する人も多かった。
そのことを十分に承知していたのだろうか。
彼は就任会見の席でこう語った。
「さまざまな具材がそれぞれの色彩と食感を誇る、
ビビンバ政治」を目指したい。
十人十色の議員を具材にたとえ、
各自が自分なりに味を出し、
能力を発揮してシナジーを最大化にする意味で
語ったものと捉えられている。
つまり、ビビンバで和合を例えたのだ。
▲様々な具を混ぜて食べるビビンバは、
このように和合だけでなく、
さらに深い意味を含んでいる。
元来、自然環境を克服する中で発展してきた
飲食文化は、時代的、思想的な背景を
含んでいることが多い。
韓国料理も東洋哲学の影響で、
医食同源思想や陰陽五行の哲学が潜んでいる。
▲陰陽五行の哲学を如実に
表しているのがビビンバと言える。
もやし、セリ、ほうれん草、わらび、大根、
きゅうり、卵、肉など、
ビビンバに使われている様々な具材は、
木火土金水を象徴している。
食べ物の五行思想は体を陰、食べ物を陽とみなし、
木火土金水で象徴される様々なエネルギー
(食べ物)を補充することで、
陰陽のバランスを保ち、健康を守ろうという
意味を含んでいる。
食べるだけでも健康になりそうな料理だ。
ビビンバが含んでいる意味はそれだけではない。
▲ビビンバの由来といえば、いくつか説があり、
韓国内でも意見が分かれている。
朝鮮王朝の宮廷料理説、農繁期に食べた混ぜご飯説、
儀礼の際に食べた供え物説などがある。
この中で目を引くのが、先祖を祀る儀式を終えた後に
捧げた酒や料理を食べる風習だ。これを飲福という。
氏神とともに食べるという「神人共食」思想が
背景にあり、
食べることで福があるという意味を含んでいる。
ぼくはこの「飲福」こそ、ビビンバの由来であると見ている。
その理由は、飲福が幸せを呼ぶ「分かち合いの精神」を
含んでいるからである。
幸せの第一歩は、分かち合うことから始まる。
飲福にはそういう深い意味が含まれている。
ビビンバが「和合」の象徴として使われるのも、
背景に飲福の意味があるからではないか。
ビビンバを食するときは一人ではなく、
誰かと一緒に食べたいものだ。
一緒に食べるだけでも、心が通じ、
福がやってくるはずだ。