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日本酒は、ワインより旨いのか?

日本酒の旨味


日本酒はその豊かな風味と深い味わいで、多くの人々に愛されています。ワインには旨味成分が含まれるものの味覚閾値以下でした。では、日本酒には旨味成分は、どのくらい含まれているのでしょうか? 今回は、日本酒に含まれる旨味成分について、科学的な視点から見てみたいと思います。

旨味とは?


旨味は、1908年に日本の科学者池田菊苗によって発見された、五つ目の基本味です。グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸などのアミノ酸や核酸によって引き起こされ、この味は肉、魚、野菜、乳製品、そして発酵食品に多く含まれています。旨味は、料理に深みと豊かさを与え、他の味覚を引き立てる役割を果たします。

日本酒の旨味成分


日本酒は、米と水を発酵させて作られる伝統的な日本の酒です。この発酵過程で、酵母と麹菌が働き、多くのアミノ酸(遊離アミノ酸:FAA)が生成されます。これらのFAAが日本酒の旨味の源となっています。

日本酒に含まれるFAAとその役割

  1. グルタミン酸(Glu):

    • グルタミン酸は日本酒に豊富に含まれる旨味成分であり、単独でも強い旨味を感じさせます。

    • 前回ご紹介したシャンパンと牡蠣の相性についての論文「シャンパンと牡蠣の味のペアリングの科学的原理としてのうま味の相乗効果」(参考文献1)を書いたCharlotte Vinther Schmidt博士は「発酵飲料のうま味の潜在力:日本酒、ワイン、シャンパン、そしてビール」(参考論文2)という論文も書いています。この論文では8種類の日本酒を調べています。グルタミン酸含有量は8~54 mg/100 mLの範囲で、
      カナダのJunmai Nama Genshu. Osake Artisan Sake Makerは、
      53 mg/100mlとかなり高い値を示しています。

    • グルタミン酸の味覚閾値は一般に29〜30 mg/100 mLですから、十分に旨味を感じることができる値です。

ちなみに、
    沢の鶴 米だけ 16.1 mg/100 mL
    玉櫻 純米吟醸 14.2 mg/100 mL
    沢の鶴 特別生酛純米 11.0 mg/100 mL
      という測定値が、参考論文2に掲載されていました。

そして、Charlotte Vinther Schmidt博士は、なんとデンマーク デンマーク首都地域 コペンハーゲンで、Umamamiaという会社の出資者&CTOになっていました!どんな事業なんでしょうね。興味シンシン

2.アルギニン(Arg):

  • アルギニンは日本酒のFAAの中で最も多く含まれる成分の一つであり、全FAAの約16%を占めます。

  • アルギニンは、苦味とともに旨味を引き立てる役割を果たします。

3.アラニン(Ala):

  • アラニンもまた日本酒に多く含まれるFAAであり、全FAAの約13%を占めます。

  • アラニンは甘味を持ち、全体の味わいをまろやかにします。

4.セリン(Ser):

  • セリンは全FAAの約9%を占め、日本酒の風味に寄与します。

  • セリンは甘味と旨味を増強する役割を持ちます。

旨味の相乗効果


日本酒に含まれるFAAは、他の旨味成分と組み合わせることで強い相乗効果を発揮します。特にグルタミン酸は、イノシン酸やグアニル酸と組み合わせることで、旨味が何倍にも増強されます。

具体例

  • 日本酒とシーフード:

    • 日本酒のグルタミン酸とシーフード中のイノシン酸やグアニル酸が組み合わさることで、旨味が強化され、全体の味わいが豊かになります。

    • 例えば、牡蠣やホタテと日本酒の組み合わせは、非常に強力な旨味相乗効果を生み出します。

  • 日本酒とチーズ:

    • チーズもまたグルタミン酸を多く含むため、日本酒との相性が良いです。特に熟成チーズは、日本酒の旨味を引き立て、複雑な風味を楽しむことができます。

日本酒の選び方と楽しみ方


日本酒の旨味を最大限に楽しむためには、どうすればいいのでしょう?

  1. 長期間熟成された日本酒を選ぶ:

    • 長期間熟成された日本酒は、グルタミン酸なの旨味成分が豊富になるそうです。

  2. 食材とのペアリングを工夫する:

    • 旨味成分を多く含む食材と日本酒を合わせることで、強い旨味相乗効果を楽しむことができそうです。

  3. 温度管理:

    • 日本酒の風味は温度によって大きく変わります。冷やして飲むと爽やかな味わいが、温めると旨味が引き立ちます。

お酒における旨味の科学も、面白いですよね。

参考文献

1.Schmidt CV, Olsen K, Mouritsen OG. Umami synergy as the scientific principle behind taste-pairing champagne and oysters. Sci Rep. 2020 Nov 18;10(1):20077. doi: 10.1038/s41598-020-77107-w. PMID: 33208820; PMCID: PMC7676262.

2.Vinther Schmidt C, Olsen K, Mouritsen OG. Umami potential of fermented beverages: Sake, wine, champagne, and beer. Food Chem. 2021 Oct 30;360:128971. doi: 10.1016/j.foodchem.2020.128971. Epub 2021 Jan 6. PMID: 34052711.

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