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海外で暮らすとは

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おむすびのお話。

90年代後半から海外で暮らす私は、 当然、空港は何度も行っている。 けれど実は、空港内でのレストランで食事したことは一度もありません。 羽田空港なんかすごくキレイになって、 搭乗客でなくても、デートスポットになるほど飲食店やお店が充実していますよね。 もちろん、魅力的なレストランの存在は知っております。 なぜレストランを利用しないのかというと、 出発の際に、うちの母が必ずおむすびを持たせてくれるのです。 日本に到着した時は、一刻も早く家に帰りたいので、まず空港

懐かしの爆音

人は、ある匂いや音などの五感をもとに、過去の出来事や記憶を呼び起こすことがありますよね。 心理学では、香り、いわゆる臭覚が一番記憶と繋がりが強いと言われていますが、故郷とは全く関係のない場所やシチュエーションで、当時の感覚や感情なんかを思い出す。こういう経験は、おそらく多くの人がしているのではないでしょうか。 ある料理の香りがしてきて、田舎のおばあちゃんが作ってくれたごはんの匂いだ!と、夏休みの記憶や当時のワクワクがよみがえったり、 怖い本を読んでいる時にかけていた音楽

書くことは自分との対話

私は、元々絵を描くことが好きで、 おもてで遊んだり、ゲームをしたりするよりは、 ひとりでお絵かきをよくしていた。 三歳になったばかりの七五三の写真に、小さい紙切れが挟んであって、 三人の人の絵が描いてあった。 きちんと目と鼻と口があって、ヒトの形をした三人の人。 三歳なりたての私が描いたらしい。 絵の上達は早かったようだ。 私は、兄と姉がいる、三人兄妹の末っ子だったため、 とにかくおとなしく、自分を表現しない子どもだった。 上がうるさすぎたためだ。 普通

家のポストを覗くように、受信箱を開く楽しみがあった

#はじめてのインターネット あれはもう、1998年のことだ。 カナダに留学して、英語のコースのカリキュラムに、パソコンを使う授業があった。 提出する宿題はすべて手書きではなく、パソコンのワードで作成したものしか受け付けないとの事で、皆にタイピングを練習もらおうというクラスであった。 英語だってままならないのに、キーボードで打つの…?Aがどこだ、Gはどこだ、とほとんどみんな指一本で探しつつやっていた。そんな原始人並みの私たちを見て先生は、5本の指を全部使って、手を左右に

孤独は悪いもんじゃない

修士課程に行くにあたって、ある先生が言った。 「研究は孤独よ。」と。 ある意味、一種のオタクの領域に入るのかな。 もちろん同じ分野を勉強している人は沢山いて、手を取り合えば良いじゃないか、とも言えるが、実際はそうでもない。 みんながみんなピンポイントで全く同じところを見つめているわけではない。 むしろ、全く別分野の研究者と「研究」についての悩みなんかをくっちゃべった方が、良い刺激になったりするもんだ。 結局のところ、手探りで、掴めるのか掴めないのか分からない賢者の