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saudade そらさむくふゆとなる
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「saudade」
ーあとがきのようなものー
12ヶ月の自然の移ろいを72に分け、細やかにあらわした七十二候(しちじゅうにこう)。その表現も、気づきも、文字もなんて美しいんだろうと、無謀にもそれに合わせて、ひとりの女性と、夜だけ人になる2匹の猫の寄り添うような暮らしを描いてみようと思いました。
思ったけど追い付かないまま暦は七十二候をなぞり、冬の入り口を描いたはずがすっかり冬は深まり、今日はこの冬一番の寒波が来ています。
季節は踏みとどまることがなく、七十二候があらわすのも移ろう中でのそれぞれたった数日間の様子です。解釈はいろいろありますが、このお話は「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」12月7日ごろを指します。
空に重い雲が広がり、閉塞感が増していく頃でしょうか。
ココアの思い出は、亡き父とのもの。
小さいころから、ココアをいれてくれるのは父でした。父はなんにでもブランデーを入れます。
ココアならラムでは?と思われるかもですが、単に父がラムを飲まなかったから(家にあったのがブランデーだったから)でしょう。でも生クリームにもブレンデー入れるとおいしいです。
ポルトガル語の「saudade(サウダージ、サウダーデ)」は、直訳するのが難しいと言われている、ポルトガル人の根底に流れている感情だそうです。いまはないもの、もう会えない人、二度と見れない景色・・・懐かしさと喪失感、諦めと憧れ、痛みと喜び。そういった甘い気持ちと苦く切ない気持ち、相反するふたつが同時に訪れるような、きっと誰でも経験する、胸がギュッとなるあの気持ちです。
この言葉を聞くと、「きつねの窓」のお話を思い出します。
きつねが染めてくれた、思い出を覗ける三角窓がつくれる指を、男はどうしてあやまって洗ってしまったのか。それはつらくかなしい。
でも、そのほうがよかったのかもしれません。
わたしにその指があったら、きっとずっと眺めてしまって、帰ってこれなくなるから。「今」を失ってしまうから。
saudadeには、過去への郷愁だけでなく、未来への渇望といった側面もあるそうです。まだ見ぬ未来、行けないであろう未来。
過去、現在、未来。
今はどんな未来へ繋がっているのか、過去が違ったら、今はまた違っていたのか。今は過去から見た未来ならば道はどこで別れるのか。過去も未来も、すべてが同時に起きている現在進行形の今なんじゃないか。すべて不可避で不可欠な、逃れられない今がずっと続いているだけなのか。
美しいのは過ぎてしまった時間だけではなく、いまこの時間、この場所にも、いつか私は繰り返し戻るでしょう。ほんとうになんでもない一日、それもまた二度と戻れないいとおしい日で、だからこそ帰りたいと思い出す時がくるのかもしれません。
街にはじめて雪が降った日、彼女がなぜ泣いていたのか。それはまたいつかの続きのお話で。
ぐだぐだと心の声をダダ漏れさせてしまった記事は、一作目だけでも描き上げたことで削除しようと思いましたが、まぁこれもまたわたし。恥ずかしいけどそのままにすることに。
「猫が」「夜だけ」「人語を話し」「エプロンしてお茶出してる」で設定同じじゃん!!と絶望したわたしに言いたい。ぜんぜん被ってないんじゃない?笑
(大騒ぎを反省。励ましてくださったみなさまに感謝です。)