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漫画雑談『地獄楽』
『チェンソーマン』(藤本タツキ先生)は、テレビアニメ1期目が終了。私の好きなレゼ編が待ち遠しいです。原作漫画の方では、最近アサもヨルも可愛らしく思えてきました。
『スパイファミリー』(遠藤達哉先生)はアニメ2期目が終了。原作漫画も絶好調ですね。みんなアーニャが大好きです。
『ダンダダン』(龍幸伸先生)は、アニメ化も待ったなしでしょう。超絶作画に想像の斜め上をゆく展開、ウケて当然です。
こんなにたくさんの良作がどんどん現れるなんて、本当に素晴らしい世の中になったと思います。
しかし! なぜ! 賀来ゆうじ先生の力作『地獄楽』のアニメ情報が、なかなか出てこないのだ! と、怒りの火法師を放ちかけたところで、やっと諸々の情報が解禁されました。2023年4月に放送とのこと。これはもう、感涙の火法師です。(結局放つ)
タツキ先生の『ファイアパンチ』のときのアシ仲間だったのが遠藤先生と龍先生、そして賀来先生です。まさに梁山泊状態だったのですね。
そして賀来先生の『地獄楽』では遠藤先生と龍先生がスタッフとして参加しています。この辺の関係性を知ると、漫画ファンならワクワクするしかありません。
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『地獄楽』への愛情の深さがシジャ並みだと証明されました。
江戸時代の末期、不老不死の仙薬を探しに、罪人と処刑人たちが謎だらけの島を巡る物語です。時に殺し合い、時に助け合う活劇です。
『地獄楽』という題名は一見して大仰にも思えますが、読み出せばその世界観をうまく一言で表していると腑に落ちます。
まず舞台となる島は、美しいのに不気味です。色とりどりの花や、点在する神仏の像らしき造形物は整っているようでいてデタラメであり、不自然でグロテスクです。これらの装置が物語の先に待ち受ける混沌を予感させ、不安な気持ちになるのです。
そんなときに竈神くんやら門神さんのような怪物がひょっこり現れるのですから、私のようなビビリなんぞは脳みそがぐわんぐわんと振り回される感覚に陥りました。なんというセンス・オブ・ワンダー! 大好きです。これは間違いなく恋愛の感覚です。知らんけど。
基本的にエンタメなのですが、少々観念的な面もあるので読者によっては好き嫌いが分かれてしまうかもしれません。
まず登場人物はそれぞれ内面に、自身では克服し難い苦悩や矛盾する本心を抱え込んでいます。
主人公の忍者・画眉丸は、最初は殺されることを望むような口ぶりでいて、実は生きて帰ることに執着しています。それはなぜか?
もう一人の主人公である佐切は心根の優しい女性ですが、それが処刑人としては致命的な弱みになっていることに苦しみます。
私の最も好きな女忍者・杠は利己的で、自分ひとりが生き残ればいいような言動をとりながら、反面どこかで死を望んでいる節があります。
他の人物も同様に、複雑な心情を隠し持っています。
そんな本来なら理解し合うことのない者たちが、異次元の存在と敵対します。否応なく共闘するにあたり、陰陽五行の思想にある氣という生命エネルギーのようなものが大きく関わってくることになります。
タオには五つの異なる性質があり、互いに力を与えたり奪ったりします。彼らはそれぞれのタオを用いて連携しながら戦います。
やがて命を預け合うハードな展開になり、与え、与えられる関係を築く中で、彼らはそれぞれに信頼関係を得たり、目を背けていた自身の苦悩に深く向き合うようになります。
物語はまさに陰と陽を一体として閉じるように、見事に完結します。
読み終えて、特に死生観を問われているようにも感じました。もちろん私ごとき中途半端な人間には、答えを持ち合わせようもありません。ただこの作品の中で死んだ者、生き残った者、すべてが等しく、愛おしく感じました。今はそれだけでよいと受け入れて、未熟な私は忍法火法師の修行をがんばります。