〔ショートストーリー〕風の色
「風の色を探しに行きたい」
あの夏の終わり、彼はそう言ってこの海辺の街を出て行ったわ。私はそれを信じた振りをして、笑って見送っただけよ。
売れない水彩画家の彼は、私がいないと生きていけないと、口癖のように言っていた。だから私は必死で働いたわ。彼には好きな色で、好きな物を、自由に描いて欲しくて。
彼は海辺の風景が好きでね、いつも青の絵の具を欲しがっていた。買い足しても買い足しても、青の絵の具ばかりすぐになくなって。深い青も明るい青も、様々な名前で売られていたけれど、本当は私に