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将棋プログラムはプロ棋士の夢を見るか?ー映画「AWAKE」ー
映画「AWAKE」を観た。
本作は2015年に実際にあった将棋電王戦を元に描かれたフィクションだ。
「AWAKE」とは、将棋ソフトの名称である。そして、その製作者は、元奨励会員だった。奨励会とは、将棋のプロになるための登竜門であり、ここで勝ち上がらないと、プロにはなれない。厳しい年齢制限があり、26歳までにプロになれないと退会になる。
この物語の主人公、清田は、将棋のプロを目指して、10年以上、奨励会にいたものの、プロになれず、一度夢を諦めてしまった男だ。
仕方なく入った大学で、死んだ魚のような目をして生活している時に、清田は父親がパソコンで将棋ソフトを使っているのを見る。そして、人間にはない自由な手を打つ将棋ソフトに、新しい生きがいを見つける。
清田は、大学のサークルで一からAI技術を学び、自らの作ったソフト「AWAKE」をどんどん強くしていく。やがて、将棋ソフトの大会でも優勝するようになり、ついにプロ棋士とも対局することになる。
それが、将棋電王戦だ。プログラムと人間の優劣を競う残酷な催し物だが、まだ、2015年の時点では、人間の方が上であるという微かな希望があったからこそ、成立したのだろう。
しかし、この時点でも「AWAKE」はとてつもない強さになっていて、プロといえど勝利するのは難しい存在になっていた。だが、勝負は思いもよらぬ展開を迎える。
側から見れば、コンピュータープログラムと人間の対決でしかないものを、この映画では、元奨励会員である一度夢を諦めた男と現在のプロ棋士である夢をつかんだ男の対決として、見せていて、最後まで飽きさせない。
現実には、将棋電王戦は2017年に名人が「ponanza」という将棋ソフトに敗北し、その後は開催されなくなる。ついに、将棋ソフトは人間を超えたのだ。
今では、将棋の対局は、棋士が最善の一手を指したか否かをAIが判断する。テレビで見ていると、一手ごとに優劣が判断され、勝率のパーセンテージが変動する。いかにAIが考える手と同じように打てるかが、強さをはかる基準になってしまったのだ。
しかし、それでも将棋はなくならなかった。人間と人間の知を競う対決を見たいという観客は、プログラムが人間を超えても消えなかったからだ。
ちなみに、映画は主演が吉沢亮なのだが、演技がうますぎて、彼だというこに全く気が付かなかった。対局相手のプロ棋士を「愛がなんだ」のナカハラ君を演じた若葉竜也が演じていたのもとてもよかった。