ゆっくりの方が難しい。書道5か月目の壁。
「きれいに書けるようになってきたね。でもさっさと筆を運んでいるでしょう。もっとゆっくり書いてみなさい」
そう言われたのが先月のお稽古の時。
書道を始めて5か月。
大きくてふにゃふにゃな制御不能文字しか書けなかった私も、それっぽい字が書けるようになってきた。
力んで太すぎる線にならないように、
かといって力が抜けすぎて線がガタガタしないように、
変に止まらず、流れのある文字を書けるように。
素早く書くことで、これらの課題を解決できることに気づいて、最近はさっさっと書いていた。
うん、いい感じ。さらさら~って書いてる人っぽくなってるんじゃない?字も上手くなってきたかもしれない。
と、鼻が伸び始めていたのを敏感に察知した先生が、優しく、でも力強くへし折ってきた。ぽきり。
言われたとおり、ゆっくりと書く練習をしてみる。
するとどうだろう。まったく文字が書けなくなったではないか!
書き始めた頃の制御不能文字に戻ってしまった。この絶望感は、後で食べようと大事にとっておいたアイスクリームを勝手に旦那に食べられてしまったときのそれに近いものがあった。
ここでふと、大学時代のビッグバンドジャズサークルを思い出した。
サークルには楽器初心者で入ってくる子たちもいるから、はじめは簡単な曲から始める。
みんな、先輩たちのイケイケ爆速ナンバーに憧れて、練習を重ね、アップテンポで勢いのある曲をやりたがった。
しかし練習を重ねると気づく。
初心者向けの「簡単だ」とされていた曲の方が断然難しいことに。
簡単とされる理由は、スピードがゆっくりで、音数が少ないから。確かに「ただ吹く/弾く」だけなら容易だけれど、「曲にする」となると話は別物。一音一音のきれいさ、音の入り切りの丁寧さ、抑揚のつけ方などなど、一つ一つの技術の基礎力はもちろん、表現力もかなり大事になってくる。
速くて音数の多い曲は、そこらへんが雑でも勢いでそれっぽく聞こえてしまうのだ。
書道と音楽。きっとそのほかの分野も、同じなんだろうなぁ。