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(水戸黄門+鬼平犯科帳)÷2×るろうに剣心/今村翔吾『くらまし屋稼業』
みたいな本だなって思ってます。今村翔吾さんの『くらまし屋稼業』シリーズ。
時は江戸時代。人々の間でまことしやかに噂される「くらまし屋」の存在。何でも、大金を払えばどんな状況下からでも晦ましてくれるという。正体は誰も知らず、連絡の取り方も諸説ある。けれども確かに、誰それが跡形もなく消え去った、という話は耳にする…
そんな「くらまし屋」稼業を営む男が主人公。訳ありの依頼者たちを晦ませるのは至難の業。こんなに敵に囲まれた状況で、どうやったって抜け出せないだろうという中でも、知恵と武力で鮮やかに切り抜ける。ただ剣を交えるだけではない、奇想天外な脱出策も面白い。
一話完結で、毎回異なる依頼者を晦まし続けてはや8巻。と言いつつ、くらまし屋にまつわる話が少しずつ進んでいくので、1巻から読み始めることをおすすめします。
さて、このシリーズ、どんな感じ?と聞かれたら、「(水戸黄門+鬼平犯科帳)÷2×るろうに剣心だよ」と言いたい。
小学生の頃、家に帰ってテレビ「水戸黄門」を見るのがものすごく楽しみだった。黄門様と助さん格さんとその他心強い仲間たちが世直し行脚をするという勧善懲悪もの。
毎話かならず悪者がでてきて、必ず成敗される。ただの気楽なご隠居一行かと思いきや、助さん格さんは圧倒的強さで、黄門様にいたっては水戸光圀公(とんでもなく偉い人)!
この、能ある鷹は爪を隠すスタイル、いいですよねぇ。最後に悪代官が「まじか!」って顔をする瞬間がいい。そして必ず黄門様が勝つという安心感。ミステリーのようなハラハラドキドキ感やどんでん返しはないけれど、安心感があるからこそ細部をゆっくり楽しめるのです。
そしてここに、鬼平犯科帳のエッセンスを足します。
今村翔吾さんが池波正太郎さんリスペクトなのを何かで読んだのをきっかけに手に取った鬼平犯科帳シリーズ。なるほど、料理屋のおいしそうなご飯の描写とか、悪人にも人生や葛藤があるところとか、何が正義なのか、みたいなところとか、同じ匂いを感じます。
そんな時代物2作品を足して2で割って、最後に掛け合わせますのが「るろうに剣心」。最強の神速剣「飛天御剣流」の剣心とぜひ闘ってほしい…!
ということで、『イクサガミ』の興奮が冷めやらなかったので『くらまし屋稼業』シリーズを再読しました。なお3周目。アクションシーンや主人公のカッコ良さはイクサガミとも近しいものがあるけれど、くらまし屋のほうがもう少しあったかい感じがあります。信頼できる仲間がいるからかな。
イクサガミも早く続き読みたいけど、同じくらいくらまし屋の続巻も読みたいよー。あと火消のぼろ鳶シリーズも…!