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「成瀬は信じた道を行く」 宮島未奈
「成瀬は天下を取りにいく」の続編第2作。本を選ぶとき、好きな作家の作品をさっと見て、困ったときには本屋大賞から新しい出会いを探す。前作はまだ読んでなかったけど。
成瀬あかりは、滋賀県大津市膳所の高校3年生。同級生の島崎と「ゼゼカラ」膳所から世界へ!のという漫才コンビで、夏祭りの司会を務める。独特の話し方、人の名前を一度聞いたら忘れない才能で、やりたいこと、信じる道を突き進む。
5つの物語は、成瀬の周囲の人の視点で語られることで、世界観が拡がっている。成瀬を中心に様々な人間模様が展開する。流れるようにあっさり読めた。
・成瀬に憧れる小学生の北川みらいちゃんは、グループ発表のテーマをゼゼカラとして取り組む。好きは人によって異なる。そして、先のことは分からない。こどもの純粋で不安な気持ちにゼゼカラが、寄り添う。みらいちゃんが成瀬に自主パトロールの赤い腕章をもらって前に歩き出す。
・成瀬の父は、塾も通わず、京大単願のひかりを心配する。受験の日もついていくのは、保護者というより子離れできない親として。ひかりが見つけた野宿しようとする受験生を家に泊めたり、しっかり者の娘は動じない。無事合格し、一人暮らしするかもと思ったことが早とちりとわかり娘の代わりにお祝いの胴上げされるお父さん。
親は、わが子となると我を失う。愛すべき父の胴上げに乾杯。
・大学生の成瀬は、地元スーパーでレジアルバイトを始める。お客様の声に投函する呉間さんは、抑えられない思いと、些細な告げ口のような行為にモヤモヤしていた。万引き婆さんを見つけることで、ストレスと向き合い、考え方を変えることから景色は変わる。
話すことと異なり、書いて伝えることは、観察、分析、まとめる能力が必要なんだよね。
・2人の大津観光大使が選ばれる、成瀬と選ばれたのは篠原かれん。祖母、母と3代で観光大使に。かれんは、観光大使になることが目標だった。鉄道好きはひたすら隠して、親のレールにはまって育てられてきた。観光大使グランプリに出場し、自分らしさに気づき、お見合いを断り、自分の心と向き合い解き放たれる。
・ゼゼカラの島崎は、東京の大学へ進み会えなくなる。年末、島崎はサプライズで成瀬に会いに大津へ来るが、成瀬が姿を消す。趣味のスタンプラリー、それから東京の島崎に会いにいくが、親友がそれぞれサプライズで会いに出かけてすれ違ってしまう。テレビの紅白のけん玉リレーに出場しいるのは観光大使の衣装の成瀬。日付が変わる直前に成瀬が帰って来る。
変わってるけど、真っ直ぐな成瀬の思いはしっかり周囲に届いている。思いやりに溢れた成瀬にみんなが元気をもらっている。