マガジンのカバー画像

小説の掃き溜め

12
猫宮の創作物
運営しているクリエイター

#私の作品紹介

硝子のような片想い

硝子のような片想い

 窓硝子を弾くと、こきんと冷たい音がした。

 窓の外は晴れていて、もう抜け落ちかけた橙色の葉が風に揺れているのが見える。ここから見える世界は暖かそうな陽だまりに包まれているのに、指先に触れた窓硝子は冷たかった。

「外見てどうしたの?」

 彼が両手に持ったグラスにはレモネードが入っていた。彼の歩幅に合わせて透けたイエローの水面が、上下に揺れている。四角い氷がグラスの淵にぶつかって、からかろと鈴

もっとみる