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眼鏡猫【こびと部公式応援企画】

あるところに「眼鏡猫」と呼ばれる猫がいた。

眼鏡をかけて本を読む姿は
どんな者よりもしっくりくるそうな。

この猫がかけている眼鏡はそもそもは飼い主のものだが
猫はこれをとても気に入っており、その眼鏡をよく盗んでは
自分の方がよっぽどかけているという始末である。
そして飼い主が眼鏡がないと探していても全くお構いなしで
「おやおや」といった顔ですましている。
ここでは「眼鏡が見つからない時は猫を疑え」なのだ。

今日も眼鏡猫はいつもの様に主から眼鏡を盗んだ。
それを背中に背負って平気で外へも遊びに行く。
とことこにゃんにゃん。とことこにゃんにゃん。
上機嫌。

日課であるお散歩していると道端にしゃがみこんでいる人あり。
あれは何か困っている様子である。
通り過ぎようとしたが、そこは心優しき眼鏡猫。
眼鏡を正しくかけ直し少し近くに寄ってやった。

ふむ 眼鏡を落としたとな
それはお主もお困りであるな
なんだ そんなに見つめるな
ええい 私の眼鏡をそんなに見るな
ええい しょうがない
この大事な眼鏡をお主に貸してやろうじゃないか
しかしだ
この眼鏡は必ず返しておくれ
なんせウチの主が大層困るものでな

眼鏡猫はそう言って眼鏡を貸してやることにした。
自分がよく眼鏡を盗んでいることなんて
これっぽっちもおくびにも出さずに。

お主よ すぐに行きなさい
そして事がすんだら早く返しにきておくれ

眼鏡のない眼鏡猫は少し重い足取りで家へと帰る。
主は早速のこと眼鏡を探している。

あぁ困ったぞ やれやれどうするか
あの者は返してくれるだろうか
いいや来る 来ないと困る
主も 私も

まさか猫との約束を破るやつなんているものか
そうだそうだ
そんなやつがいてたまるものか

この不安な心を鎮めるため
お気に入りの雑誌「ウミネコ」を読もうとしたが
なんせ眼鏡がない。
にゃはぁぁぁ…
ため息が出る。
うぅ…今回は猫特集であるのに…

ポーン!
玄関の呼び鈴が鳴り体がビクッとなった。
もしや。
急いでそちらへ行くと、手に眼鏡を持った者がおった。

おぉそれは私の眼鏡ではないか
よう帰ってきた よう帰ってきたなぁ

手から眼鏡をさっと奪いすぐさま奥へと引っ込む。
主は先程の者と何か話をしているようだが
それは私には関係のないこと。

私の眼鏡が戻ってきたのだ
帰ってきたのだ

さてとさてと

せっかく眼鏡も無事戻ってきたことだし
お茶でも飲みながらゆっくりと
「ウミネコ」でも読むとするかの〜

「主よ お茶を入れてくれんか」


(おしまい)


***


この記事はこびと部公式応援企画の記事となります。


応援企画とは?

この企画は、ぼんやりRADIOさんが現在制作中の
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【応援企画募集期間】

9/19(月)〜10/20(木)


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