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【旅の記憶】Vauvenargues(ヴォーヴナルグ)
2018年夏の渡仏から2年間を過ごした南仏プロヴァンス。日常の風景や生活についてはマガジン『プロヴァンスで暮らした2年間』に綴っていますが、こちらを起点とした小旅行やドライブ、街歩きは本マガジンにまとめていこうと思います。
『旅の記憶 - プロヴァンス発』。(パリ発、も後々!)
第1回はヴォーヴナルグ。
プロヴァンスの山景色
ヴォーヴナルグ(Vauvenargues)は、セザンヌも愛した山、サント・ヴィクトワールの麓の村です。義母の育った町でもあり、私の中で「プロヴァンスの山の風景」はここ。
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山を見渡しながら憩いのひと時。訪れたのが8月末で照りつける太陽はじりじりと熱かったけれど、平穏を感じました。平和だった。
この村で、自然の中を駆け回って育ったという義母。「私が死んだら、灰はサント・ヴィクトワール山に撒いてね」と言っていますが、気持ちが分かるような気がします。
ピカソのお城
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左奥に見えるのがヴォーヴナルグ城。画家ピカソのお城です。今の形に建築されたのは17~18世紀。1958年にピカソが購入し、1961年まで、ピカソにとって最後の女性となるジャクリーヌさんと共に住んでいました。数多、女性遍歴のあるピカソですが、結婚はジャクリーヌさんが2番目なんですね。現在の所有者はジャクリーヌさんの娘(ピカソの実子ではないけれど相続人)です。
ピカソはこのお城と土地を購入した時、「セザンヌのサント・ヴィクトワールを買ったぞ」と言ったそうですが、まさしく。
一般公開されている時期もあるそうですが、私たちが訪れた時は入れませんでした。セザンヌの描いたサント・ヴィクトワール山の麓、プロヴァンスの山々に囲まれて、こんなお城で生活するピカソの子孫。どんな暮らしだろう~と、遠くにお城を眺めながら話しました。
町の「みんなの本棚」
ヴォーヴナルグは地域全体の人口が1000人ほどで、小ぢんまりとした町はとても静かです。歩いていると、元気な子どもたちとすれ違いました。町の入り口に学校がありましたが、一学級に何人くらいの子がいるのかな。
フランスの自治体ではたまに見かけるのですが、町なかに「みんなの本棚」があります。棚には鍵もかかっていなくて、誰でも本を置いていけ、持って帰れます。
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こんなふうに何気なく、もう読まなくなった本を置きに来て、もしかしたらいつか誰かが手に取ることを少し想像しながら帰っていく。たまたま通りかかって本棚の扉を開けて、かつて誰かのそばにあった本や雑誌を、知らない誰かが拾っていく。
古書店で本を求めるのとも少し違う、本を通じた人のつながり。そこから広がる、本の世界の旅の始まり。こういう温かみとてもいいな、好きだなあと思います。私も、読まなくなった日本語の本をいつか置きに来ようかな。
夏のプロヴァンス、ヴォーヴナルグ散歩の午後でした。