五月雪

2018年晩夏よりフランスに住んでいます。南仏の大学院で修士号取得後、パリにて会社員。読書、絵画鑑賞、知らないことを知るのが好き。赤ワインと黒チョコとチーズを愛す。日々丁寧に、一所懸命に生きたい。

五月雪

2018年晩夏よりフランスに住んでいます。南仏の大学院で修士号取得後、パリにて会社員。読書、絵画鑑賞、知らないことを知るのが好き。赤ワインと黒チョコとチーズを愛す。日々丁寧に、一所懸命に生きたい。

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【自己紹介】

初めまして。 2018年の晩夏からフランスに住んでいます。 フランス語の勉強を始めたのは日本にて、2012年からで、学習歴はこちらに書いています。 移住後2年間は南仏で大学院生活を送りました。文学部の修士課程で必須であったスタージュ(インターン)を各年行い、修論を書き上げて、修士号を取得しました。 フランス人夫とともにパリに移って、コロナ禍に就職活動をし、2021年の春から現地の企業に雇われています。 好きなもの、興味・関心について。 赤ワインとチーズ(羊と山羊)を

    • 【パリの日々】Flâner

      八月の真ん中。 響きが連想させるよりパリの11時はずっと涼しく、大使館から一歩出た瞬間の日差しの弱さで、私は帰路に就くよりこのまま散歩を続けることに決めた。 オリンピック期間中、選手やその家族、関係者の滞在先となっていたホテルが位置するクルセル通り。通行止めのフェンスは除かれ、一人の警官もいなければ一台の五輪専用車も停まっていない。 リスボン通りとの交差点にあるカフェに客はおらず、一人で歩くには広すぎる通りを私は下る。オスマン大通りを過ぎる車さえ疎らだ。人のいない、放ってお

      • 【パリの日々】再び都の暮らし

        noteに最後に記事を投稿したのが、早一年も前のことになってしまった。 2023年をフランスの地方都市で送ったのち、初春、私たちはパリへ帰って来た。 欠点のない完璧な町などもちろん存在しないが、やはり大好きなこの都で暮らせること、出社できること、通勤電車で本を読めること――行き帰りのこの時間が私には大切なのだと改めて気付く――、週末美術館やデパートへ行けること、目的なく街をただ歩いて、決して飽きることがないこと、 そして何より――パリの何に私は最も惹かれるのかを考えたら、

        • 【旅の記憶】Reims(ランス)

          3年前、まだ大学院生活を送っていた夏。パリの企業にてスタージュ(インターン)中、2泊3日で訪れたランス(Reims)の回想になる。 パリからTGV(新幹線)で45分、ランスはシャンパーニュ(シャンパン)の聖地であり、フランス国王の戴冠式が行われていたノートルダム大聖堂(Cathédrale Notre-Dame de Reims)の所在地。 初代フランク王国の王クロヴィス1世(在位481~511年)が、ランス司教であったサン=レミ(聖レミギウス)によって洗礼を受け、カトリ

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        【自己紹介】

        マガジン

        • パリの日々
          6本
        • 旅の記憶 - パリ発
          1本
        • 本棚は時空の旅の窓
          2本
        • プロヴァンスで暮らした2年間
          10本
        • 旅の記憶 - プロヴァンス発
          3本
        • 旅の記憶 - 2012年 フランス
          1本

        記事

          【フランス文学】夏にデュラスを読む

          デュラス(Marguerite Duras マルグリット・デュラス 1914-1996)を読みたくなるのは決まって夏だ。 求めるものをあえて手に取っているのかもしれないが、私の本棚にあるデュラス作品の大半は夏あるいはバカンス期間が舞台となっている。 脚本家、映画監督としても多くの功績を残したデュラスの文学作品を、特定のジャンルに分類することは難しい。小説。戯曲。随筆。各一篇がこれら全ての要素を兼ね備えているような、それがデュラスの世界だ。 『夏の夜の10時半』。スペイン、

          【フランス文学】夏にデュラスを読む

          室内雨楽

          雨を聴くのが好きだ。 守られた部屋の中で、外に出ねばならない予定もなく、悠々と雨に耳を傾ける。 日曜の午後は蒸し暑く、四肢がだるくてソファに伸びた。じんわりとかく汗が肌に貼りつき、休まらない。 いっそのこと少し散歩に出よう。私よりも暑さに弱い夫の誘いに、それもそうだと重い腰を上げた。 案外外気の方が涼しくは、残念ながらなかったが、会話しながら歩くことで気分の停滞は和らいだ。 時折雲が連なって過ぎ、今宵一雨降って気温が下がらぬか、吹く風の方角を見などしながら二人で天気を予想

          室内雨楽

          【南仏プロヴァンス】地中海沿いのシャペル

          7月14日、フランスは革命記念日で祝日です。 3年前、まだ南仏はプロヴァンスに住んでいた時に偶然訪れた、隠れ家のようなシャペルについて書こうと思います。 当時はコロナ禍真っ只中で、修士課程2年目に在籍していた私のインターンも延期を余儀なくされ、それでもようやく実施が決まりパリ行きの手はずを整えた。 南仏から一人旅立つ直前、休日のドライブの記憶を写真とともに。 真っ青な地中海の海岸線に沿って、La Ciotat(ラ・シオタ)、ワインで有名なBandol(ボンドル)、San

          【南仏プロヴァンス】地中海沿いのシャペル

          転居と旅と

          日本語で文章を書かなくなって、気付けば長い時間が経ってしまっていた。 というのも、夫の転勤に伴い年始に引っ越しをし、今はフランス国内の地方都市に住んでいる。私の仕事はパリのままなので、普段はリモートで働き月に一、二度出社している。 新しい生活にも慣れ、順調でないことは何もないのだが、半年暮らしてみて夫婦ともどもこの町が気に入っていない。天候や建築に影響される町の佇まいに愛着を覚えるという意味でも、単純に利便性の面でも、美術館や博物館の充実度にも、良さを見出せずにいる。 けれ

          転居と旅と

          【パリの日々】秋雨の間に

          神無月も残すところ2週間弱、パリの夜明けは8時15分をまわるようになってきた。 東の空のずっと先には日本があるから、日の出には国を思う。 私には、メモ帳以上日記以下のとりとめのないノートに言葉を紡いでいた時期があり、それらは秋の夜の残片であることが多い。 今日は、秋雨の合間に思い出すことなどを。 プーシキン、マルセイユオペラ座での「エヴゲーニイ・オネーギン」ロシアの小説家・劇作家・詩人の中で私はプーシキンが最も好きだ。 『大尉の娘』で度肝を抜かれ、『ベールキン物語』中でも

          【パリの日々】秋雨の間に

          【パリの日々】秋色

          冬の足音が聞こえてきそうなパリの朝、で始まった10月だったが。 町を見渡せば、木々はしっかりと秋の色を呈していた。 秋の空は美しい。夏の鋭い太陽とは異なる、優しい黄色味を帯びた光線が地上の冷気を和らげて、木々の彩りを映えさせる。灰色の雲の下でも紅葉は刻むようにはっきりと息遣いを伝えて、振り返る者をはっとさせる。 朝の気温は変わらず10度を割るか割らないかで、日中は20度になれば暖かい方。 日の出は遅く7時半過ぎに、日暮れも19時過ぎまでに早まってきた。ここから10月末の

          【パリの日々】秋色

          【パリの日々】冬の足音と高村光太郎

          noteの更新が少し空いた。 その間にパリはぐっと寒くなり、朝の気温は10度を下回る日も増えてきた。 これがこちらの「秋」なのかもしれないが、毎年、秋をじっくり味わうことなく気が付くと冬を迎えている感覚があり、それが年々強くなる。季節が多様性を失っていって、夏と冬ばかりが長くなるように感じる一年。私が知覚しないだけで、自然は小さな変化を日々しているのだとも思うけれど。 朝外に出て、想像以上の冷気に顔を刺され、頭の中に大事にしまわれていた高村光太郎の詩が降って来る。 冬の

          【パリの日々】冬の足音と高村光太郎

          【旅の記憶】Cassis(カシ)

          『旅の記憶 - プロヴァンス発』、ヴォーヴナルグに続いて今回はCassis(カシ)です。 カシはCassisと書いて、地中海のカランク(美しく特徴的な海岸線)の一つとして有名です。プロヴァンス旅行では定番のスポットかもしれません。 読み方ですが、フランス人が「カシなの? カシスなの?」と聞いているのに遭遇したことがあり、どうやら南仏の人はカシだけれど、パリや他の地方ではカシスと呼ばれることもある、ようです。 フランス語は原則では語尾のsを発音しませんが、固有名詞をはじめ最

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          【旅の記憶】Vauvenargues(ヴォーヴナルグ)

          2018年夏の渡仏から2年間を過ごした南仏プロヴァンス。日常の風景や生活についてはマガジン『プロヴァンスで暮らした2年間』に綴っていますが、こちらを起点とした小旅行やドライブ、街歩きは本マガジンにまとめていこうと思います。 『旅の記憶 - プロヴァンス発』。(パリ発、も後々!) 第1回はヴォーヴナルグ。 プロヴァンスの山景色ヴォーヴナルグ(Vauvenargues)は、セザンヌも愛した山、サント・ヴィクトワールの麓の村です。義母の育った町でもあり、私の中で「プロヴァンス

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          【南仏プロヴァンス暮らし】Arles / アルル

          修士課程の1年目に在籍していた2019年、インターン(stage、スタージュ)のため初夏の2か月間をアルルという町で過ごしました。 ↓ 前回記事でもちょこっと触れました。 アルフォンス・ドーデの短編『アルルの女(L'Arlésienne)』、その戯曲のために作られたジョルジュ・ビゼーによる音楽、あるいはゴッホの描いた町としても有名かと思います。 今日は、写真とともにそのアルルを振り返ってみます。 円形闘技場まずは、町のシンボル古代ローマの円形闘技場(Arènes)。闘

          【南仏プロヴァンス暮らし】Arles / アルル

          【パリの日々】十五夜

          中秋の名月にあたった昨日土曜、パリは朝から曇り空、肌寒く雨が降ったり止んだりを繰り返していた。一足早く夜を迎えた日本から、満月の写真が届いたが「こちらでは見られないかもしれないな」と思っていた。 夕方、時折雨に降られながら散歩をして、いつもの土曜のように休日の赤ワインを堪能、時間は心地よく流れた。日の長い夏はとうに過ぎ去って、今は日没が20時過ぎになっている。 21時半頃、窓の外に目をやると大きな黄金の満月が強い光を放っていた。空も雲ももう灰色でなく、アパルトマンの部屋か

          【パリの日々】十五夜

          【南仏プロヴァンス暮らし】Le Rhône sous la pluie / 雨下のローヌ川

          私は川が、川のある町、風景が好きです。 パリが特別な町である理由はたくさんあるでしょうが、私にとってはセーヌ河岸、全体が世界遺産である川とそれをかたどる建造物群の、得も言われぬ美しさがまず浮かびます。 2019年の初夏、修士課程1年目の終わりに、プロヴァンスのアルル(Arles)という町でインターン(stage、スタージュ)をしました。 2か月間、エアビー(Airbnb)の狭い一室を借りて家主と共同生活。スタージュ先の企業はアルル中心部から離れた野原(笑)の中にあり、毎日

          【南仏プロヴァンス暮らし】Le Rhône sous la pluie / 雨下のローヌ川