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土 地球最後のナゾ(藤井一至著)㊦

                          2018年出版 光文社新書 962  920円 前回㊤では、地球の土壌や腐植の仕組みについてのお話でした。著者の藤井一至氏は1981年富山県生まれ、カナダの永久凍土からインドネシアの熱帯雨林までスコップ片手に世界各地、日本の津々浦々を飛び回り、土の成り立ちと持続的な利用方法を研究しています。 学者先生と言えばずっと机に向かい難しい論文を書いているイメージですが、スコップ片手に飛び回るフットワークの軽さに驚きます。その姿勢

土 地球最後のナゾ(藤井一至著)㊤   

この本に出合うまで、土について考えたことは全くありませんでした。サブタイトルには「100億人を養う土壌を求めて」とあります。そう言われてみれば、穀物や野菜.果樹.牧畜など私たちの食べ物の多くは、土に依存しています。 「土は地味だ」と著者である藤井一至氏は、たびたび自嘲気味に述べられています。が、ルネサンスの巨匠レオナルド.ダ.ヴィンチはこう語ったそうです。「我々は天体の動きについての方が分かっている、足元にある土よりも」天才はやはり目の付け所が違うのでしょうか。 土という

本棚から … 陰翳礼讃

陰翳礼讃が初めて世に出たのは、1933年12月号の「経済往来」(~1934年1月号)で、本の出版は1939年です。著者の谷崎潤一郎は、1886年(明治19年)日本橋に 生まれ1965年(昭和40年)没。今では創元社、角川、中央公論、岩波などから文庫本として出ています。(青空文庫でも読めます。) ほぼ100年前の本なので古典ともいえるし、お読みになった方も多いでしょう。書名は聞いていたものの、私が読んだのはつい数年前です。「(こんな面白い本を読まないで)今まで勿体ないことをし

本棚から…                木のヨーロッパ/建築とまち歩きの事典

まずこの本のタイトルが目を引きます。石畳にゴシック建築がそびえたつ、ヨーロッパといえばこんな風景のはずでしたが、行ったことは無いので、映画や絵画からの思い込みだったのでしょう。目からうろこが落ちるような興味深い本だったので、一部ご紹介いたします。 木のヨーロッパ/建築とまち歩きの事典  太田邦夫著                                 2015年 彰国社発行 1,まえがき(要約) 2、ヨーロッパの環境 3、木造建築例少しですが、本に登場する写

木の文化(小原二郎著)下

前回は「古代人と木」、「天然材料と人工材料」についての話でした。 針葉樹と広葉樹 樹木を大別して、針葉樹と広葉樹に分けられることはいうまでもない。この区分は、植物学的な立場からの立木としての分類であるが、一方木材を工芸的に使う実際上の立場からみても、同じような違いがある。このことは木材の造形的な性質を考えるうえで、とくに留意しておかなければならない点である。 〈 感 想 〉 針葉樹と広葉樹の違いといっても、通常あまり意識されてないかもしれません。大まかに言うならば、針葉樹

木の文化(小原二郎著)… 上

昭和47年(1972年)発行の「木の文化」は、今読み返しても興味深い内容です。文化というと社会学系のイメージですが、著者は人間工学の研究者です。特に印象に残った箇所をまとめ引用し、つたない感想も加えご紹介します。 小原二郎 こはら じろう 1916年 長野県木曽生まれ 京都大学卒 /専攻は専攻は人間工学、住宅産業、木材工学など 著 書  「人間工学からの発想」、「日本人と木の文化」、「法隆寺を支えた木」、「インテリア大辞典」など 古代人と木 我々の祖先は有史以前から木の材