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誰でも使える交渉術! 『Snow job とは?』

「Snow job」というのを聞いたことはあるでしょうか?
これは、交渉術の中でも情報操作を使った戦略のひとつで、相手に意図的に大量の情報を提供することで、混乱させたり、焦点をぼやかせたりする手法です。この手法を用いることで、交渉の主導権を握ろうとしたり、相手に不利な条件を見逃させることが目的とされています。

「snow job」という表現は、英語の「snow(雪)」が示す視覚的なイメージから来ています。この手法は、大量の情報が「雪のように降りかかり」、相手の視界を覆ってしまう様子を指しています。まるで激しい雪で視界が遮られるように、情報が過剰に与えられることで、本質的なポイントが見えなくなる状態を表現しているのです。

具体的に言えば、情報の「雪嵐」によって相手の思考や判断力が一時的に麻痺することを狙っているため、「snow job」と呼ばれるようになりました。

1. snow jobの具体的な手法と目的

  • 過剰な情報の提供: 相手が情報を処理しきれなくなるほどのデータや説明を一気に提供することで、相手の集中力を削ぎ、本質を見失わせます。

  • 複雑な専門知識やデータの使用: 相手が理解しづらい技術的な詳細や専門用語を用いることで、相手が質問や異議を挟みにくくなり、流れに乗せられやすくなります。

  • 選択肢を見えにくくする: 本題とは関係のない情報を加えることで、相手に本当の選択肢やリスクが見えにくくさせ、判断を誤らせようとします。

例えば、価格交渉で相手が「材料費、製造費、人件費の見積もり、それに関わる調達リスクの統計…」といった大量のデータを一気に出してくる場合、重要なポイントをぼかしながら、自分たちの有利な条件を通そうとする意図があるかもしれません。

また、この手法を使うことはお勧めできません。
なぜならこれは、結局、相手の信頼を損ねる可能性も高いため、リスクが伴う手法といえるでしょう。
交渉術のテクニックとしては、普通にZOPA(交渉可能領域)やBATNA(交渉の最良代替案)などを使う方をお勧めします。

しかし、相手側が意図的に「Snow job」を仕掛けてくることもあるでしょう。その時、これはSnow jobだな、と認識して対処することが必要になります。相手に勝手をさせないために何が必要でしょうか?

相手が「snow job」を使ってきた場合、以下に着目することで、それが意図的に情報過多で煙に巻こうとしているのかを見抜けることができます:

1. 情報の量と関連性

  • 相手が大量の情報を提供しているのに、その多くが交渉の主題と直接関係がない場合は注意が必要です。重要なポイントに関連性の薄いデータや細かい説明を繰り返すことで、相手が意図的に焦点をぼかしている可能性があります。

2. 複雑な専門用語や詳細なデータ

  • 難解な専門用語や詳細すぎるデータが過剰に提供される場合も、意図的に混乱させようとしているサインです。相手が細かい技術的説明や業界特有の知識を強調してきたら、「snow job」の可能性があります。

3. 本質的な質問に対する回避的な態度

  • 本質的な質問に対して、はぐらかすように回答したり、あえて別の話題に誘導しようとしたりする場合も、「snow job」を疑ってよいでしょう。明確な回答が避けられていると感じたら、意図的な情報操作の可能性があります。

4. 話の流れが定まらない

  • 情報があちこち飛び、話の流れが不自然に複雑だったり矛盾したりする場合も、「snow job」を仕掛けられている兆候です。内容が整理されていないか、焦点が定まっていないと感じたら、相手が煙に巻こうとしている可能性があります。

例えば、こんな例はどうでしょう?
短いですが、A社担当者はわかりやすく煙に巻こうとして来ます。

シチュエーション:
新しいプロジェクトのコストに関する会議で、相手(A社の担当者)が過剰なデータを提供し、議論を複雑にしています。


A社担当者: 「今回のプロジェクトのコスト見積もりですが、まず各工程ごとの原材料コストの内訳をご覧ください。ここで使われている素材は、Aランクの品質であるため、多少コストがかかっています。また、製造プロセスについては、24時間稼働することも想定していますので、電力消費量に関するデータもこちらに…」

B社ユーザー: 「わかりました。ただ、最終的なコストの合計がどうなるかが気になりますが…」

A社担当者: 「もちろん、合計についても後ほどお話ししますが、まずは細かいパラメータごとに理解していただくために、こちらのグラフも見ていただけますか?原材料費の推移と、同時に保管コストにかかる影響もお伝えしておきたくて…」

B社ユーザー: 「あ、そうですね…なるほど、ではとりあえず続きを聞かせていただけますか?」

(その後、情報量に圧倒され、焦点がぼやけたまま会議が終了)

さて、Snow jobを使われた場合の対処法をどうするか、ですが、以下を参考にして下さい。

  • 具体的な質問を投げかける: 重要なポイントに絞って質問することで、相手に焦点を合わせることを求めます。「この部分がどう関係するのかを具体的に説明していただけますか?」と聞くことで、本題に戻すよう促します。

  • 要約を要求する: たくさんの情報を一気に提供された場合、「こちらの要点を教えていただけますか?」と要約を求めることで、重要な部分を絞り出すことができます。

  • 議論の整理を行う: 交渉の途中で一旦立ち止まり、議題を整理し直すのも効果的です。情報過多に圧倒されずに、自分のペースで進行を取り戻すために、「今のところで重要なポイントを整理してみましょう」と言うことで、主導権を奪われないようにできます。

次のケースを見てみましょう!

A社担当者: 「今回のプロジェクトの原材料についてですが、Aランクの素材を使っており、これがコストに影響しています。素材の調達先も複数のルートを利用していて…」

B社ユーザー: 「すみません、一旦確認させてください。このプロジェクトでの原材料コストが全体に与える影響が、今回の会議の焦点になると思いますが、具体的にどのくらいの影響がありますか?全体コストを理解したいので、要約していただけますか?」

A社担当者: 「ええと…そうですね、原材料コストは全体の約30%を占める予定です。」

B社ユーザー: 「ありがとうございます。それが分かれば助かります。では、その30%が変動するリスクがどの程度あるのか、もう少し具体的に教えていただけますか?」

A社担当者: 「承知しました。基本的には安定供給の契約があるため、大きな変動は想定していませんが、例外があればリスクもあるかと思います。」


このように、具体的な質問や要約を求めることで、会議の本題に焦点を絞り、相手の「snow job」を有効に回避することができます。

Snow jobは交渉に使うべきではありません。なぜなら交渉とは自分だけが得をすれば良いとか、自分の主張だけが通れば良いというものではありません。その議論の結果、より良いアウトプットを期待するものです。win-winの関係が理想的でありますが、少なくとも「建設的な答え」を得ることは間違いなく、その『目標』とすべきものです。
しかし、意図的かそうでないかに関わらず、経験的にSnow jobで”小さな”成功をしてきた連中も一定数いるのも事実です。
知らなければSnow jobの餌食になってしまうかもしれません。知っておくことは有効な防衛になります。





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