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俺たちのFIRE

FIRE Financial Independence,Retire Early 甘く優美な言葉。特にRetire Earlyは大好きなシンガーソングライター大橋トリオに歌詞に入れて歌い上げて欲しい。
サラリーマン歴20年以上、仕事のある日の朝、歯磨きしていると酷くえづく。毎日が辛い。投資には今まで無縁で最近ようやくつみたてNISAを始めたてみたばかり。40半ばからではFIREには程遠いことは、自分でも分かっている。ただRitire Earlyの夢を私も見てみたい。一縷の希望を抱いて『普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門』山崎俊輔(Discover)を手にした。


『普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門』

よく「社畜」という言葉が使われます。会社の家畜になり下がっているという意味合いですが、社畜には2つの要素があると思います。
ひとつは精神的に従属している状態です。会社のいうことを疑いもなく受け入れるようマインドコントロールされている場合などです。
低賃金、長時間労働で、怒鳴られながら仕事をしても、会社に疑問は抱かず、むしろ感謝するように教え込まれているようなケースは、そもそも労働基準法にも反していますし、周囲が手助けをしてなんとか脱出させ、精神的な縛りを解き放つ必要があります。
もうひとつは経済的に支配されている状態です。ブラック企業の多くは低賃金でこき使っていますが、問題は「お金がない」から仕事をやめられないということです。
辞表を出して辞めた時、雇用保険の給付は2ヵ月+7日もらえないので、そのあいだを生きられなければ辞める自由さえないのです。

『普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門』

「私は社畜か?」と何度も自問自答して、いつしか「私は社畜だ」とボソボソつぶやいている。社畜のまま、まもなく70歳が定年になる世の中が日本にはやって来るらしいのだ。
70歳になるまで今の会社で仕事をしている自分の姿がイメージができない。もしそうなったら、自分で「あぁ、いたたまれない」と咽び泣きながら仕事をしていることだろう。まぁ、きっと今の職場に70歳目前の自分を放り込むからいたたまれない気持ちになるのだろうけど。
20代から40代が集う職場に70歳目前の私が座っている。
あっ、いたたまれない。
ただ、その頃には周囲に60代の同僚が溢れているんだろう。

FIREを目指すには、まずは何よりも年収のアップ。それから節約&投資だ。投資をするにも元手が必要。だから、年収アップがFIREの基盤となる。

「能力があれば、あるいはまじめに働いていれば、周囲が自然に評価してくれる」と思うのは昭和の発想です。年功序列の時代には時間の経過とともにおおむね年収が高まってきました。平均以下の社員であっても同期入社組とセットで年収が増えていました。
今はそんな楽な時代ではありません。むしろ、あなたの能力が高まっていても、「上がつかえている」とか「下がいない(何年も新規採用していないので)」という理由で現状維持が続くことがある時代です。
自覚的に、かつアクティブにならなければ、年収を増やすチャンスは巡ってきません。
あなたが本気でFIREを目指すなら、のんびり待っている時間はありません。FIRE実現のための最大の敵は「時間」です。年収を上げるための努力を惜しんではいけないし、時間を何年もムダにしているヒマはないのです。

『普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門』

「自覚的に、かつアクティブに」というのは転職も辞さないスタンスの薦めだ。
FIREをするためには自分自身のキャリア形成を真剣に考え、実行していく力が必要になる。しがない中小企業に勤め続けていいのか。ただ今の自分の年齢から転職というのもあまり現実的ではなく、更に上の役職に就くことがチラついているかもしれない(というスケベ心がムラムラする)現在の立ち位置なので、新たな企業で一から頑張ってみるか、という気持ちも湧き上がってこない。
そんな時には、今の職場でのお給料アップのヒントもくれる。

社内で年収を増やしたいのなら、人事評価を高くすることが欠かせません。ところがほとんどの人は人事評価を高くする努力を怠っているか軽視しています。
たとえば、人事評価シートのようなものを記入し、自己申告する会社はたくさんありますが、これを本気で書いている人は多くありません。ある会社では「自分の年収を左右する重要な書類なのだから、仕事に本気になるのと同じくらい、シート記入に本気になるように」と被評価者研修を実施していますが、こうした会社はまれです。
あなたが100のアウトプットをしているのに80の評価しかしてもらえないことが、シートの記入の手抜きにあるのならこれほどバカなことはありません。人事シートをまじめに書くことは100の能力を100評価してもらうためにも欠かせないのです。
あなたより仕事で劣っているはずの隣の同僚が、人事シートをまじめに書いたことであなたより高評価を受けていたら、どうでしょうか。手抜きシートを提出して「上司は自分を評価できないのか」と憤るのは筋違いというものです。
仕事に本気を出して取り組むことは当たり前のことです。しかしその仕事を評価してもらうことにも本気を出すことを忘れないようにしてください。

『普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門』

部下の人事評価シートを考課する立場になり、これには凄く納得した。手抜きのシートは高評価しにくいんですよね。私自身も人事評価シートって面倒くさいだけで、本当意味ないよね、という感情を抱きながら取り組んでいるので部下の気持ちが凄く分かるのだが。自分がどんなことを目標として日々の業務に取り組むかきちんと言語化できることが(カタチだけでも)できる人は、仕事ができそうに思えてくるのだ。
この箇所は手抜きシートを提出する部下に読ませてあげたい。そして若かりし頃の自分にも。
「うちみたいな中小企業では上の役職に就かないことには、たいして給料は上がらないし、上を目指せるなら目指すべきだ」とかつて上司に言われたことがある。それには人事評価シートをきちんと作成しアピールすることも有効な手段だったのだ。
自分のキャリア形成を真剣に考えてこなかった過去の自分を恨む。「FIRE」という言葉を20年前に流行させて欲しかった。2002年に流行語大賞を受賞した多摩川のアゴヒゲアザラシの「タマちゃん」ではなくて。
やっぱり猫が好き。それでもやっぱりRetire Earlyは諦めたくない。

一般的な老後資産形成のスタート年齢として45歳があるとしたら、40歳からのFIREチャレンジは遅すぎるということでしょうか。そんなことはありません。
一般的な老後資産形成はiDeCoの満額を確実に積み上げて、これに退職金を加えれば「老後に2000万円」はなんとかなりますよ、というところにとどまります。
40歳代から本気でFIREに挑むなら、それ以上の貯蓄の上積みは欠かせませんが、そこから始めてもまだ間に合います。生活水準はある程度固定化していますのでこれをもう一段引き下げ、年収についてはもうワンランク上を目指してみます。転職もそろそろ最後のチャレンジです。住宅ローンや教育費準備などをこなしつつも、年収の30%以上を貯めていけると資産形成のペースは相当加速していきます。
しっかりがんばれば、プチFIREは実現範囲として見えてくるはずです。たかが5年と思うかもしれませんが、5年あれば相当のことができます。
おそらく「70歳が標準のリタイア年齢」となる時代に「60歳で引退」となるのでFIREの華麗なイメージとはかけ離れているように思いますが、今でいう50歳代のFIREに近いイメージではないでしょうか。

『普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門』


『「働くこと」を問い直す』

40代でのFIREも目指せなくはない、という希望を抱けた少し安心できたことで、もう一度「働くこと」について考えてみた。労使関係について書かれた『「働くこと」を問い直す』山崎憲(岩波新書)。早く「働くこと」から解放されるためには「働くこと」を問い直す必要があるのかもしれない。

企業規模が大きくなるほど、組織は機能的に分けられる。そこには、一人ひとりが密接に連携しあう仕組みが存在する。
働く側からすれば、「自分が企業に提供した分だけの対価を、賃金として手に入れるのだ」と考えるかもしれない。しかし、ホワイトカラーであれ、ブルーカラーであれ、企業の要求にどこまで応えればよいのか際限がわかりにくい。どこまで自分が労働力を提供したのかも曖昧だ。それは、企業という組織が、働く一人ひとりの密接な連携を競争力の源泉としているからである。そうして、企業は働く側の貢献を「どこまでも」求めようとする。それは、成果の大きさだったり、働く時間の長さだったり、安い賃金で働かせるということだったりする。
そのとき、働く一人ひとりは、企業の要求に応えるために働いているのだろうか、それとも自らの意志で「どこまでも」働こうとするのだろうか。
働いた成果のすべてを自分のものとすることができるのならば、話は簡単だ。ところが、企業に雇われていて働いていると、すべての成果が自分のものになるわけではない。働いている人の努力は、組織全体を円滑に動かすことへと溶け込んでしまう。はっきりと、「この仕事は自分のためにやっているのだ」と実感できる部分は少ない。
企業と働く人は、それぞれ、どこを目指しているのだろうか。
企業は、利益や社会貢献などを追っているようにみえるが、その究極の目的は「存続し続けること」にある。人間が永遠の命を求めることと同じだ。利益をどれだけ上げたとしても、社会貢献をどれだけしたとしても、事業を続けることができなくなれば、すべてが無意味になる。そのためにこそ、企業は働く側の貢献を求めるのだ。
一方で、働く側は、自らの暮らしを支え、家族を養い、子どもに教育を受けさせ、住むところを用意し、老後や病気になったときのために備えるということを、最低限必要なことと考えている。そのうえで、働くことを通じた自己実現や社会貢献といったことができるようになる。働く側と企業の目指すところは、必ずしも同じではない。
もう一つ、話を複雑にしていることがある。
働く人同士の連携を高めることは、短期間ではできない。長い期間に渡って同じ場所で働くことで、そこに仲間意識や愛着がわいてくる。そうして連携がつくられていく。それは同時に、働く人にとっての「拠り所」としての意味を職場に与えている。その「拠り所」を守るために、一人ひとりが進んで働くことがある。しかし、そうしたときでさえ、企業と働く側の想いが一致しているわけではない。

『「働くこと」を問い直す』

一体会社といつまで、どこまで付き合えばいいのか。「会社に尽くす」という言葉が今でも使われているのかどうかわからない。今時「会社への忠誠心」なんて口に出す人間がいたら、単純に気持ちワル!といった感情しか抱かないであろう。ただ何となくそういったニュアンスの圧力が誰も口にしないまま、どんよりと会社に漂っていることもある。
会社と働く側の想いもそうだが、そもそも働く一人ひとりの想いが一致しているわけでもない。FIREを目指している人、自分の範疇の仕事以外は関わりたくない人、子供のお世話や家事が忙しいのでできれば早く帰りたい人、仕事が生き甲斐でバリバリやりたい人、バリバリはやりたいけれど残業はしたくない人。バラバラな意図を持ったいろんな世代の人々が集まって職場を形成している。
しかし会社は、そんな職場に際限なく会社への貢献を求めてくる。働く側の満場一位はあり得ないから、収集がつかなくなる。
働く人と会社をどう繋ぐのか。それが中管理職の仕事なんだろうけど、私自身の答えが出ていないのに、最上の答えを部下に提示するなんてことができない。いつまでそんなことを日々考え続けないといけないのか、試行錯誤を繰り返さないといけないのか「あぁ、うんざりする」っていうときのためのFIREだ。

線香花火のような小さな炎でもいい、燃え上がれ俺のFIRE。男闘呼たちは希望がある限り、FIREを目指すべきだろう。会社の欲望に右往左往するのはうんざりだ。そして蚊取り線香のようでもいい落ち着いた老後を迎えたい。
と言いつつ、いざリタイアするとなれば寂しくて会社に長居したりするのかもしれないが・・・。いかんいかん、こんなことを考えるから、私は社畜だ。


今月の本
『普通の会社員でもできる日本版FIRE超入門』山崎俊輔(Discover)
『「働くこと」を問い直す』山崎憲(岩波新書)


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