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まとめた「ソート」はどうやって発信する? 「共感」を生むソートリーダーシップが走り出す

近年、企業活動においてその重要性を増しているマーケティング手法の一つ「ソートリーダーシップ(Thought Leadership)」。国際社会経済研究所(IISE)の公式noteでは全5回にわたって、ソートリーダーシップの意義や進め方、プロセスなどについて解説していきます。
第1回はソートリーダーシップの全体像を概観第2回では「ソートリーダー」に求められる条件について。前回の第3回では「ソートをまとめるプロセス(ソートデザイン)」について解説してきました。この第4回ではまとめてきたソートを「発信」していく活動について、考えていきます。


ソートを「発信」するコンテンツのポイントは4つ

第1回から第3回までの解説を踏まえると、ソートを「発信」するための勘所が分かってきます。重要なのは、「誰が、誰に、何を」発信するか、届けたい相手に合わせて見極めること。そして、発信する際のコンテンツ(主にウェブを想定)に求められるのは、①新規性、②専門性、③ファクト、④分かりやすさです。

ウェブコンテンツに求められる条件(主にBtoB)

①新規性
Googleなどの検索エンジンは、人々にとって利便性の高いコンテンツを上位にランキングするアルゴリズムになっている。既視感のない「新しい」考え方、誰もが何となく思っているが「言語化」できていない考え方。そうした新規性あるコンテンツを、リアルタイムかつ継続的に発信ができれば「そう、これが必要だったんだ」と人々から評価を受け、有益なコンテンツと判断され、上位に表示される。

②専門性
発信者(ソートリーダー)や発信するコンテンツの、業界における専門性を意識する。専門メディアからの取材を受けるなど、他社評価も意識する。これもSEO対策につながる。検索エンジンはコンテンツの内容に加え、権威性を評価する。そのため、高い専門性を持った情報を発信すれば、上位に表示される可能性が高まる。

③ファクト
大学や研究者、アカデミアによる仮説や研究などを、ソートに関連する「エビデンス」として提示する。あるいは、自社独自の調査結果や統計データを活用する。このファクトは、ソートの具現化(事業化、実用化)への「本気度」を示す材料ともなる。確かなファクトを提示することで、ソートを「絵に描いた餅」と捉えられないようにする。

④分かりやすさ
形式はオンラインコンテンツ、動画、ホワイトペーパー、セミナー、書籍など。「②専門性」も大事だが、同時に分かりやすさも大事。社会的に意義のある内容であったとしても、人々に理解されなければ「共感」を得ることはできない(押し付けになってはいけない)。大事なのは、伝える相手を意識した表現にすること。そのために、文章を専門的にまとめるライター(コピーライター含む)、デザイナー、動画クリエイターなどの知見を取り込む。

ソートの発信においてはBtoBであっても、BtoCのノウハウ、クリエイティビティを活用することが重要です。BtoBもBtoCも「BtoBtoC」と捉えられるからです。大事なのは上記4つのポイントを前提とした「量・質・継続性」です。そのうえでマーケティングやブランディングなどの知見を生かし、相手に合わせて方法を選び取ることができます。

ソートの発信は「プル/ストック」から始めよ

発信の手法は一般的に、大きく分けて「プッシュ」と「プル」の2種類があります。プッシュは、企業側から人々に向けて積極的にアプローチする手法です。マスメディアでの広告やPR、SNSでの拡散など、よりマスに向けたアプローチが該当します。

一方でプルは、能動的に必要な情報を探す人々の方から、企業にアプローチしてもらう手法です。あらかじめ定めたキーワードのウェブ検索からのオーガニック流入と呼ばれるものです。

ソートの発信においては「バイラル」マーケティング的なアプローチが重要と考えています。「バイラル」とは、人から人へと、その情報が「自然発生的に」広まっていく様を指します。ラーメン店の行列を見た人が興味を惹かれてその列に並び、さらなる行列を生み出す。SNSでもその評判が拡散して、それを探し当てた人がまた新たに行列に並ぶ……。一過性ではなく、継続的に伝播していく「行列が行列を生む」バイラル的なアプローチは、ソートリーダーシップに適しています。

いかにプル(行列)を作り出せるか。バイラル的なアプローチにおいて目指すのは、その情報を欲している人が、自分から探してきたときに届けることができるようにすること。一人ひとり、仲間が増えていくのを(=行列に並ぶのを)可視化する。それが、ソートの発信においては非常に重要です。

発信には「誰が」と「今の行動」を示すことが重要

最後に、ただ発信する「だけ」では不十分ということも補足しておきます。

近年は人々の関心や期待が大きく変化し、商品やサービスではなく、企業自体に向けられています。企業がソートをただ発信するだけでは「共感」を得られなくなってきています。必要なのは、具体的な、今の「行動」を示すことです。

具体的な行動の一つとして、実際にソートを具現化したプロトタイプを作成して社内外に見せ、その中身を検証するサイクルを、高速で回していくことも例に挙げられます。

それから、「誰が発信しているか」も重要です。

マスマーケティング時代は内容がより重視され、それを発信した人や企業への関心は希薄でした。その代表例がプレスリリース。事実とデータの紹介だけで、誰が書いても同じに見えてしまう内容です。

一方で今のSNS時代は、コンテンツの中心に「人」があります。企業が発信するとき、その主体が誰なのか、「人」の要素を重視しなければなりません。企業名を出しても、発信者の顔が見えない形で発信しては、関心が集まりにくくなっています。経営トップも前に出て、企業が取っている今の「行動」を自ら示していくことが必要です。

時にはリスクを取ることも重要です。企業が具体的な行動を示すことは、企業のポジションを社会に向けて明確化することでもあります。ソートリーダーシップを発信するコンテンツには「新規性」が求められますが、新しいものには賛否両論がついて回ります。しかし反対意見を恐れていては、具体的な行動を示す=明確なポジションを打ち出すことが難しくなります。

※以下の記事などもご参考ください

さて次回は、ソートリーダーシップとマーケティングとブランディング、この3つがどのように関連し、活動を進めていくのか。この視点から、ソートリーダーシップの実践へ必要なことを改めて考えていきます。非常に重要なポイントに差し掛かってきます。次回、詳しく見ていきましょう。

企画・制作・編集:IISEソートリーダーシップHub(藤沢久美、鈴木章太郎、榛葉幸哉、石垣亜純)

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