まとめた「ソート」はどうやって発信する? 「共感」を生むソートリーダーシップが走り出す
近年、企業活動においてその重要性を増しているマーケティング手法の一つ「ソートリーダーシップ(Thought Leadership)」。国際社会経済研究所(IISE)の公式noteでは全5回にわたって、ソートリーダーシップの意義や進め方、プロセスなどについて解説していきます。
第1回はソートリーダーシップの全体像を概観、第2回では「ソートリーダー」に求められる条件について。前回の第3回では「ソートをまとめるプロセス(ソートデザイン)」について解説してきました。この第4回ではまとめてきたソートを「発信」していく活動について、考えていきます。
ソートを「発信」するコンテンツのポイントは4つ
第1回から第3回までの解説を踏まえると、ソートを「発信」するための勘所が分かってきます。重要なのは、「誰が、誰に、何を」発信するか、届けたい相手に合わせて見極めること。そして、発信する際のコンテンツ(主にウェブを想定)に求められるのは、①新規性、②専門性、③ファクト、④分かりやすさです。
ソートの発信においてはBtoBであっても、BtoCのノウハウ、クリエイティビティを活用することが重要です。BtoBもBtoCも「BtoBtoC」と捉えられるからです。大事なのは上記4つのポイントを前提とした「量・質・継続性」です。そのうえでマーケティングやブランディングなどの知見を生かし、相手に合わせて方法を選び取ることができます。
ソートの発信は「プル/ストック」から始めよ
発信の手法は一般的に、大きく分けて「プッシュ」と「プル」の2種類があります。プッシュは、企業側から人々に向けて積極的にアプローチする手法です。マスメディアでの広告やPR、SNSでの拡散など、よりマスに向けたアプローチが該当します。
一方でプルは、能動的に必要な情報を探す人々の方から、企業にアプローチしてもらう手法です。あらかじめ定めたキーワードのウェブ検索からのオーガニック流入と呼ばれるものです。
ソートの発信においては「バイラル」マーケティング的なアプローチが重要と考えています。「バイラル」とは、人から人へと、その情報が「自然発生的に」広まっていく様を指します。ラーメン店の行列を見た人が興味を惹かれてその列に並び、さらなる行列を生み出す。SNSでもその評判が拡散して、それを探し当てた人がまた新たに行列に並ぶ……。一過性ではなく、継続的に伝播していく「行列が行列を生む」バイラル的なアプローチは、ソートリーダーシップに適しています。
いかにプル(行列)を作り出せるか。バイラル的なアプローチにおいて目指すのは、その情報を欲している人が、自分から探してきたときに届けることができるようにすること。一人ひとり、仲間が増えていくのを(=行列に並ぶのを)可視化する。それが、ソートの発信においては非常に重要です。
発信には「誰が」と「今の行動」を示すことが重要
最後に、ただ発信する「だけ」では不十分ということも補足しておきます。
近年は人々の関心や期待が大きく変化し、商品やサービスではなく、企業自体に向けられています。企業がソートをただ発信するだけでは「共感」を得られなくなってきています。必要なのは、具体的な、今の「行動」を示すことです。
具体的な行動の一つとして、実際にソートを具現化したプロトタイプを作成して社内外に見せ、その中身を検証するサイクルを、高速で回していくことも例に挙げられます。
それから、「誰が発信しているか」も重要です。
マスマーケティング時代は内容がより重視され、それを発信した人や企業への関心は希薄でした。その代表例がプレスリリース。事実とデータの紹介だけで、誰が書いても同じに見えてしまう内容です。
一方で今のSNS時代は、コンテンツの中心に「人」があります。企業が発信するとき、その主体が誰なのか、「人」の要素を重視しなければなりません。企業名を出しても、発信者の顔が見えない形で発信しては、関心が集まりにくくなっています。経営トップも前に出て、企業が取っている今の「行動」を自ら示していくことが必要です。
時にはリスクを取ることも重要です。企業が具体的な行動を示すことは、企業のポジションを社会に向けて明確化することでもあります。ソートリーダーシップを発信するコンテンツには「新規性」が求められますが、新しいものには賛否両論がついて回ります。しかし反対意見を恐れていては、具体的な行動を示す=明確なポジションを打ち出すことが難しくなります。
※以下の記事などもご参考ください
さて次回は、ソートリーダーシップとマーケティングとブランディング、この3つがどのように関連し、活動を進めていくのか。この視点から、ソートリーダーシップの実践へ必要なことを改めて考えていきます。非常に重要なポイントに差し掛かってきます。次回、詳しく見ていきましょう。
企画・制作・編集:IISEソートリーダーシップHub(藤沢久美、鈴木章太郎、榛葉幸哉、石垣亜純)