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おいしい本と

母が食べ物関係の本が好きだったので、影響されて私も母の本を読んだ
家には母の本がたくさんあった。
母は食べ物関係の随筆が好きだった。
子母沢寛「味覚極楽」
海老沢泰久「美味礼賛」
森須滋郎「食べてびっくり」
吉田健一「舌鼓ところどころ」
檀一雄「美味放浪記」
子母沢寛の「味覚極楽」は各界の著名人に子母沢氏が直接聴き取ったうまい物の話だ。
社長や芸術家、高級料亭の八百善や老舗の寿司や中国料理の話の中、1番私の印象に残り、今だ胸に残っているのは、お坊さんの語った話だ。冷や飯に沢庵。
出かける時はこの沢庵を細かく切って飯に混ぜ込んで握り飯にして持っていく。確かこれに揉んだ海苔をまぶしていたような気がするが、もうかなり以前に読んだので記憶が曖昧だ。
握り飯を持っていくのは俗世の食い物は「くさい」からなのだそうだ。「臭うて臭うて、わしは慣れぬ物を食べてヘドをだした。」
檀家が梅醤を持ってきてくれたが、魚かなんかを煮た鍋でこしらえたのか臭うてかなわんかった。この「俗世の食い物が臭い」というのがいつまでも私の心に残り続けている。
後で母にきいたら母もこの冷や飯に沢庵の坊さんの話が1番、印象に残ったそうだ。
読み終わった時「臭うて臭うて…」とどれだけ俗世の食い物は臭いのだろうか…と果てしのない空想にふけるのだった。

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