私のずるずる、ラーメン。
おいしい文藝「ずるずる、ラーメン」を読んだ。1冊まるまる作家のラーメン話。
店の超うまい1杯。残念な1杯。
まずくて愕然とするラーメン。
病床で憧れる出前のラーメン。
インスタントのサッポロ1番みそラーメンにカップの雲呑麺。
私が1番美味しそう!と思ったのは古波蔵保好の鶏ソバだ。
台湾の鼎泰豊で妻と食べた鶏ソバ。
とにかく麺料理だろうと指差しで注文したそれは、まず小づくりの丼に湯気のたつ麺だけ運ばれてきた。あれ?汁がないんかな、と訝しく思っていると店の女の子が小型の壺を運んできた。
壺から透明な汁と骨付き鶏肉を麺に流しこむと、その麺は出来上がりなのだ。
壺で蒸し上げて極上の鶏スープを使った麺。
これが滅茶苦茶美味しそうなんですよ!
鼎泰豊は今では日本でも支店があるし、小籠包で有名だ。
古波蔵さんがここで鶏ソバと小籠包を堪能したのは1980年頃、その時、この極上鶏スープ麺は100円で釣りがくる程だったそうだ。
単純な私はラーメンが食べたくてたまらなくなった。
極上の鶏ソバでなくていいから普通の中華そば的な醤油ラーメンが。
私はラーメンが好きではなかった。
昔のラーメンは麺がカンスイ臭かった。
だからどうしてもあいつがうまいと思えなかった。
むしろカップラーメンの方が好きだった。
ペヤングわかめラーメン。
今ではこのわかめラーメンをスーパーでまったく見かけない。
幻のカップラーメンだ。
家族はラーメン好きなので外食というと頻繁にラーメン屋行きになり、私は毎度チャーハンを食べた。チャーハンについてくる小さいスープはすごく好きだった。
現代のラーメンはカンスイ臭くなくなり、
味も洗練されグルメジャンルに数えられる。私は昔ながらの醤油ラーメンに憧れる。
林静一の「屋台のラーメン」の場面が理想だ。寒い冬の日。銭湯の帰りに母とふたりで屋台のラーメンをすする少年。風呂屋の前に「支那そば」の屋台があるのだ。その「支那そば」の具は海苔と支那竹、鳴門に青物。そう。こういう具がいい。
そして質素な醤油スープ。
親子ならんで屋台ですするというのが素敵じゃないですか。
現代ではほぼ消滅してしまった光景なんじゃないかな。
屋台のラーメン屋なんて見かけないなぁ…。
ラーメン屋というと行列。券売機。大盛り、つけ麺というのも流行った。
たまーに気まぐれに食べたくなる。
私のラーメンはそういう食べ物だ。
願わくばシンプルな醤油ラーメン。