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「社畜」という言葉は好きじゃない
三度目の正直、いや、四度目、違う、五度目だ。昨年末、五度目の正直で、会社のとある試験に合格した。その試験はいわゆる昇進試験というやつで、社員全員に受ける義務があるわけでもなく、一方でとくに推薦などが必要なわけでもない。決められた課程の研修を修了していれば誰でも受けられる。
試験は一次試験に筆記、二次試験に実技が行われる。ずっと一次通過止まりだった。そう、知識はどうにか詰め込むことができたのだった。内容は、今年度の会社全体の予算などの流動的なもの以外、一度覚えてしまえばそうそう忘れない。なんせ五回目だしね。
多くの受検者同様、わたしには実技が鬼門だった。わたしの記事を読んでくださっているひとなら察しがつくかもしれないけれど、わたしは、とっさの場面で気の利いたことが言えない。想定外の状況にあたふたしてしまう。店頭であたふたしているとさすがに客の信用をうしない、会社の看板を汚しかねないので、いまではどうにかごまかす術を身につけた。とりあえず笑顔。共感、オウム返し。ですよね、わかります(*´ω`*) あとは、一緒に悩んでみるのも使えることを知った。えー、悩みますよね、わかります(*´ω`*) って。
しかし、試験ではそのような姑息なテクニックは通用せず、ただの減点対象である。お客様の悩みを聞き出せておらず、適切なご提案ができていません。スキンケア製品をお求めのお客様にも、メイクアップのご提案とタッチアップを行いましょう。応対の時間配分ができておらず、再来店したくなるクローズになっていません。はあ。ん? 試験は加点方式だったっけ? 合否の結果には無機質に〇点、と数字が記されているだけだ。
とにかく、わたしは実技で落ち続けていた。なんとなく好感が持てそうな応対はできても、会社の求める「正しい」接客ができなかった。が、今回は仮面を被りきり、どうにか合格ラインに達する応対ができたらしい。試験は、実際こんなお客さんいないよね、というシチュエーションが多いのだが、まあ、とりあえず順応できたということなのだろう。
所属している会社に嫌気が差し、水面下で転職活動に励んでいた時期もあったけれど、結局、今年度もこの試験を受けた。どっちつかずだと自分でも思う。一般的に言って、現職を続けながらの転職活動は、おそらく失業してのそれよりもモチベーションは保ちにくいだろう。ご多分に漏れずわたしもそうだ。あるいは妥協したくない気持ちが強いのかもしれない。いずれにしても、「いまの仕事」という保険がある限り、よくも悪くも転職活動は慎重になりブレーキがかかる。
そういうわけで、一時期に比べると、転職のモチベーションはずいぶん下がってしまった。毎日のように転職サイトをチェックし応募を繰り返していた時期に比べ、いまやその回数は月に数えるほど。でも、月に数回でもサイトにログインすることでエネルギーを保たせていると言い聞かせ、0か100にならないようにしているつもりだ。慎重なのか、ただ歩みが遅いだけなのか。現職を言い訳にして後回しにしているだけなのか。
いまの仕事についている限りはできる限りの挑戦をしたいし、向上心は忘れないでいたい。お給料が上がればもっといいし、やりがいも感じたい。会社に対して思うことはいろいろあるけれど、「しょせん末端だから」と反旗を翻す勇気を持っていないわたしは、それなら自分のスキルを磨く場所として利用したい、と思う。転職活動を通じて、美容部員という仕事のつぶしの効かなさにはがっくり来ているけれど。接客は営業ですらない。
「お客様によろこんでもらえる」というのは、ある種の能力だとも思うけれど、言ってしまえばそれだけなのだ。けれど、そのような目に見えないものは大事にしたい。綺麗ごとなのかな。ああ、綺麗ごとだけでごはんが食べられればいいのに……。
でも、試験に受かったことはうれしかった。もうしばらくこの仕事をがんばってみようと思う。うれしくて、ご褒美を買ってしまおうか、などど血迷った。ご褒美はSUQQUのザ ファンデーションと決めてある(※他社。え? ご褒美、他社?)。昨年だったかリニューアルして、発売のタイミングでカウンターへ行きタッチアップまでしてもらった。色番は105。色番まで覚えているなんて、貴様買う気は無きにしも非ず、だな? そして、さすが、諭吉ファンデ、改め栄一ファンデな仕上がりだった。下地とお粉も一緒につけてもらったのだけど、時間が経ってもうつくしく、皮脂となじんだツヤがそれはそれはきれいだった。
ご褒美はともかく、まずは、後輩になめられないようにしたい。ありがたいことに、わたしは職場で「話しかけやすい」「お姉さんみたい」なキャラのようなのだけど、いかんせん威厳がなく、指示を聞いてもらえないことも多々。研修時の身だしなみチェックで注意をしても舌打ちされたり、睡魔がやってきそうな内容の講義では堂々と眠られたり。自分が、ベテランというほどでない中途半端な立ち位置であるのも要因だと思う。四十代くらいになれば違うのかしら。それまで続けているのかな。
あまり先のことはわからないけれど。わたしが左右できないこともあるけれど、わたしの人生の舵取りはわたしがすることを忘れないように。人の目ばかり気にしてできないことを増やさないように。大切なものは守っていけるように、忘れないように。とにもかくにも、仕事のプレッシャーに負けるな、ウオズミ。