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おばあちゃんのごはん

去年9月のこと。

祖父母の家に行ったら祖母が
かぼちゃのポタージュを振る舞ってくれた。

ひとくち食べた瞬間に感じた
その美味しさに思わず
「どうやって作ったの!何入れたの!」
と尋ねた。

知り合いの農家さんからもらった
「坊ちゃんかぼちゃ」に
ちょっぴりの牛乳を加えただけと
おばあちゃんは教えてくれた。

でもおばあちゃんが
じっくりことこと煮込んで
かぼちゃの甘みをぎゅ〜っと
引き出してくれたポタージュだもの。

そりゃあ美味しいに決まっていた。

今年のお正月に作った黒豆

おばあちゃんが作る数々の料理のなかでも
子どもの頃からずっと大好きだったのが
お正月にだけ食べられる

「黒豆」

おせちは好きじゃなかったけど
唯一食べられる料理だった。

いつもは祖父母の家で過ごすのに
ひとりで過ごすことにした正月

今年は黒豆を自分で作らなきゃ!
それならおせちも作らなきゃ!

そう思ってひとりで食べるおせちをつくった。

黒豆は割りと好みな味になったし
きっとおばあちゃんも
美味しいって褒めてくれる味に
仕上がっていたと思う。

この正月も帰っていればよかったのに

そう思うのも違うかと思って
あまり言わないようにしていたけれど

帰ればよかったし
一緒に作ればよかったし
味見してもらえばよかったし
色々教えてもらえばよかった

そう思うのも本当の気持ちのひとつだ。


深夜のアップルパイ

2023年1月20日(金)

おばあちゃんが家で倒れたと連絡があった。

一緒に住んでいた認知症のおじいちゃんが
懸命に訪問看護師さんに連絡し

他県に住む娘と息子(私の父)に連絡がいき

唯一駆けつけられる距離にいる親族
私に連絡がきた。

深夜ひとりで病院に向い

「もう1日、2日生きれるかどうか…
もし生き延びたとしても意識が戻ることはない」」

お医者さんから言われた言葉を
そのままただ涙を流しながら家族に伝えた。

でもおばあちゃんはたくさん頑張った。

翌朝1番の飛行機で
家族全員が揃うまで

おじいちゃんの
施設の準備が整うまで


2023年1月24日(金)

いつなにがあるかわからないと
連日起きていた私は
深夜にアップルパイを焼いた。

おばあちゃんにもらったりんごと
おばあちゃんが冷凍庫に入れていた
パイシートで作った。

倒れてから4日も息をしてくれていたから
逆に何が心残りなのだろうと

みんないろいろあるけど
私が守るから安心していいよと
勝手に話しかけていたのだけど

まさかアップルパイだったとは。

23時すぎに焼けて
少し冷めた頃
病院から連絡があった。

必死でアップルパイを持って
ひとり病院に向かったけど
なぜかほかの家族を待つか聞かれたから

まだ大丈夫なのだろうと思い
待つと答えた。

みんなが着いて
おばあちゃんに会いに行ったら
もう心臓は動いていなかった。

あぁアップルパイ焼いちゃったからかな
できちゃったからかなと思った。

でももう苦しい顔はしていなかったから
すこしだけよかったと思った。

大概のものはパパっと作れて
流行りのレシピや料理を見つけたらトライもする。

「かあさんのつくる〇〇が美味しんだよな」
と家族が口を揃えるほど

みんなの大好きな
「ごちそう」を作り続ける。

そんな偉大なるおばあちゃんさまには
まだまだとっても遠いけど

いつかおばあちゃんみたいな
おばあちゃんになれるように

食材を丁寧に扱って
いつでも綺麗に
見栄え良く盛り付けて

おじいちゃんが見たら
「今日もだいごっつぉう大会だ」
と言ってくれるような

家族にとって一番の
ごちそうを作れるように。

今度ゆっくり料理ができる日に
おばあちゃんが作ってくれていた
コーン入りの卵焼きを
作ってみようと思っているよ。



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