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【前編】言葉のインスタレーション「導きのレッスン」について(とよたまちなか芸術祭2024)
※カバー写真 撮影:鈴村莉子 suzumula liko
はじめに
本記事の目的
今年10月末から11月頭にかけて愛知県豊田市にて開催されたとよたまちなか芸術祭2024。そこで展示した私のインスタレーションについて、自分自身の覚書として記録しておきたいと思います。
展示に来てくださったり気になっていた人はもちろん、言葉の展示に興味のある人、美大卒じゃないけどアートをやってみたい人、ノブセのややこしい頭の中が覗いてみたい人などに、役立つ記事になっているといいなと思います。
とよたまちなか芸術祭とは
とよたまちなか芸術祭は、豊田市内で気軽にアートに触れられる機会をつくるために2020年度から毎年開催している芸術祭です。まちなかの店舗や施設などを会場に、展示・パフォーマンス・マルシェなどを実施し、文化芸術をより身近に感じられるイベントを目指しています。
🍋とよたまちなか芸術祭2024開催概要🍋
5回目を迎える2024年の「とよたまちなか芸術祭」は、「booost」をテーマに開催します。高める、押し上げるという意味をもつ「boost」にOを更にプラスすることで、さらなる力強さを表現。豊田市博物館がオープンするなどのアートを含む文化の盛り上がりを、より高めたいという思いが反映されています。これから、ますます面白くなる豊田市の文化の一端を、今年の「とよたまちなか芸術祭」で是非体感してください。
◆会期:2024年10月26日(土)〜11 月3日(日・祝)※10月28日(月)は休業
◆開催時間:10:00-17:00(最終日は10:00-15:00)
◆開催場所:喜多町喜多流、児ノ口公園、旧豊田市近代の産業とくらし発見館、名鉄トヨタホテル
応募のきっかけ
豊田で芸術祭が毎年開催されているのは知っていたけれど、豊田市は私の住んでいる地域からはアクセスが悪く、なんとなく億劫でこれまで足を運んだことはありませんでした。
公募プログラム まちなかアーツチャレンジのことを知ったのは、Instagramの広告で。前々から「現代アートの展示をつくってみたいな」と考えていたこともあり、ダメ元で挑戦してみることに。
大学が哲学科の美術史専攻だったこともあって、これまで見る専門で過ごしてきましたが、「どっちかというと作る側な気がする」と長年感じていて、この機会に溜め込んできたモヤモヤを解放させよう!という気持ちでした。
複数回開催されていた事前見学会に2回参加して展示の構想を練り、展示プランがなんとか固まったので応募、無事審査を通過することができました。
展示プランの構想
当初の概要
下の画像は実際の応募書類の一部。(ちょっと見づらいかもですが、これらが一番面白いと思います)
会場の一つ 旧豊田市近代の産業とくらし発見館の中庭に生えている蜜柑の木のことを、事前見学会の際にとても好きになったので、そこを中心にイメージを膨らませていきました。
![](https://assets.st-note.com/img/1735281977-GeLOY7AkmZXzpBr3biEqs5NK.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1735281977-5wH86iF3ChIjvaRqpDOQ0zUZ.jpg?width=1200)
公募のテーマは「続く道-Be going on」で、車のまちである豊田らしいテーマ。この言葉を自由に解釈して表現してよい、とのことでした。
以下は初めに書いた、テーマについてのメモ。この時点で大枠は決まっており、その後も紆余曲折はあったものの、結局ほぼこのまま行きました。
![](https://assets.st-note.com/img/1735283897-6O4JwCPmtDubz2X7B3nK85Tl.png)
葛藤と言い訳
個人的には人間優位の先進社会が好きではないし(どれだけ言い訳が用意されていたとしても)、進歩史観に興味がないのでその辺は無視したかったし、今思えばそうしたところで何の不都合もなかったのですが、謎の反逆心を持っていたがゆえの罪悪感から、誰にも求められていない自作自演の配慮に振り回されて、核心へ至るまでに随分遠回りをしてしまったな…と思っています。
例えば、下記のような事柄。
豊田の明るい未来を連想させるような要素を展示に盛り込まねばならない
そのためには、歴史を肯定的に捉える視点を入れるべきだ
市民参加型の芸術祭という性質上、「アートの入り口」となるような、日頃アートに触れない人にとってもわかりやすいものにした方がいいだろう
これらの全てがマイナスに働いた訳ではなく、よかった面も少なからずあったと思います。ただ、なくても別によかったなと。妙な縛りを自分に課したことで、柔軟性を失って頭でっかちの展示になってしまったことを反省しています。
結局今回の展示は、①自分に課した縛り(タテマエ)に沿った表現 → ②葛藤を説明したい本音の自分による言い訳 → ③理屈に疲れた自分の解放、という3段階で構成されているように思います。今これを書きながら、その結論に至りました。
会場について
旧豊田市近代の産業とくらし発見館
長くなりそうなので前・中・後編に分けようと思いますが、最後に私が展示を設置した場所である、旧豊田市近代の産業とくらし発見館について触れておきたいと思います。
市民の教養・学術・文化の発展を目的に平成17年に設置された文化財施設。近代産業と市街地の変遷やくらしの紹介を展示し、体験することを通じて、豊田市の魅力や特長を再発見できる場となっています。人や情報の交流とともに、実際に市内に点在する近代の遺産を訪れる企画を展開するなど、遺産の保存と活用を図る場ともなっています。このような、近代産業を通じて地域の特色を紹介する施設は、全国初の試みです。
大正10年に建てられた国の登録有形文化財「旧愛知県蚕業取締所第九支所」の建物を活用していて、落ち着きのある雰囲気となっていることも魅力です。市民が気軽に参加できる見学会やモノづくり講座など、地域の産業を身近に感じられるよう数多くの企画が展開されています。
※現在は閉館し、豊田市博物館に機能を引き継いだ。
ざっくりまとめると、蚕の取引所としてはじまって、時代の変遷と共に様々な役割を担ってきた、市民に愛されるモダンレトロな建築空間。現在は閉館しており、利活用の方向性を探っているところのようです。この芸術祭もその一環なのでしょう。
他にも公園や駅前のホテルなど展示場所は複数あったのですが、一目で「やるなら絶対ここにする」と決めました。
蜜柑の木
先にも少し言及しましたが、なかでも私が気に入ったのが中庭の蜜柑の木。
樹齢が100年を越えているということ、昔から近所の人が実を採りに来ていたという話などをお聞きして、なんだか涙が出そうになりました。
蜜柑の木の物語に想いを馳せながら詩を作りました。
![](https://assets.st-note.com/img/1735303011-6avWH8KpkrTREXY0MoPmh9OG.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1735303178-SclFRXwoJ7AtYfQOyB1MeZrL.jpg?width=1200)
この後きれいな実を剥いて、その場にいた人たちで食べました。
真夏日でまいってましたが、フレッシュな酸味で目が醒めました。
今回はここまでです。
次回は作品自体の紹介をしたいと思います。
お読みくださりありがとうございました。
※カバー写真は鈴村莉子さんに撮っていただきました!素敵なお写真をありがとうございます。