見出し画像

苦々しさのその先「スモールワールズ」

世間的には遅ればせながらだと思う。
一冊の本を読了した。

一穂いちほミチ著「スモールワールズ」

直木賞候補になった話題作なので、知っている人は多いだろう。既に読んだという人も。

「読み心地の違う六篇を収録した珠玉の作品集」

「ままならない現実を抱えて生きる人たちの6つの物語」
「誰かの悲しみに寄り添いながら、愛おしい喜怒哀楽を描き尽くす連作集」

と、紹介文にある通り、6つの短編作品が収録されている。

それぞれの作品は独立しているけれども、
次の作品へバトンを繋ぐように、各話の登場人物がすれ違ったりする。
ただ、顕著なのは1、2本目の最後だけで、
他はほんの少し気配が感じられる程度。
だから6つのお話は、「同じ世界に住む別々の人たちの物語」という感じ。


6篇に共通するのは何かといえば、
わたしは「苦々しさ」だと思う。
各話の主人公はそれぞれ、何らかの「苦々しい」経験や思いを抱えて生きている。
それは、自分ではどうにも出来ないことだったり、
当人にしか分かり得ない苦しみだったり、様々だ。

他者との関わりの中で、主人公がその「苦々しさ」をどうするのか。
そこが本書の見所だと思う。
立ち向かう者、寄り添う者、強引に切り開く者…目をつむったり、受け止めるだけで精一杯な者もいる。
全く三者三様(六者六様?)で、それが正しいかどうかは、きっと当人にしか判定ジャッジ出来ない。

そして、6篇に共通するもうひとつは、
ラストが「肝」であること。
衝撃の事実も、感動の涙も、絶望も希望も、
全てラストの数ページに集約されている。
この「ラスト数ページ」、涙腺が刺激されることが多いので、
本書を電車内で読む人は注意すべし。

じゃないと、こうなる

 ※読み終えるのに1ヶ月以上かかってるのは、中断してた時期があるから。


「スモールワールズ」おすすめなので、
未読の方は是非。

読むかどうか迷っている人は、
番外編的な短編が無料公開されているので、
こちらを読んでみるといいかもしれない。

全く独立したお話なので、本編を読む前でも(もちろん後でも)問題なく読むことができる。
この短編をいいなと思ったなら、きっと本編も気に入るはずだ。


【11/27追記】
短編「回転晩餐会」を、声優の櫻井孝宏さんが朗読したものがこちらで視聴できます。
わたしは最近になってこちらの動画を知ったのですが、とても良かったので皆さまにもご紹介します。
映像と、落ち着いた声に、とても感情を揺さぶられます。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

あなたの「今日」が楽しい1日になりますように  (*^▽^)/★*☆♪

いいなと思ったら応援しよう!

なゆ
読んでいただき、ありがとうございます。 いただいたサポートで、なんかイイカンジの便箋とか、文房具を買わせていただきます! よろしくお願いいたします。