読書の時間
こうして二人で読書する時間
付き合ってから初めての試み
私はスタンダールの赤と黒
彼はドストエフスキーの罪と罰
赤と黒、罪と罰
恋の裏切りと、人間の苦悩を描いた二つの物語
私は恋を知らないし、彼は苦悩を知らない
でも私は散々苦悩してきたし、彼は夜の世界で恋を散々してきただろう
だから互いのわからない事は聞けばいいんだ
恋について彼にきこう、苦悩についてならいつでも聞いてね
正と反、それらが融合して一つの真理を作り出す
二人の関係だってそうなんだ
互いに恋と苦悩について理解し合えばきっと
二人の関係も真理に近づいていく
今彼は眉を顰めて罪と罰を読んでいる
冒頭から躓いているみたい
薄っぺらな夜の世界に生きてきた彼
やっぱり人間の苦悩を知るには軽すぎるんだ
でもみんなそうやって苦悩して学んでいくんだよ
ふと顔を上げた彼、頭を振りかぶって私を呼ぶ
なぁに?とママのように返事をする私
その私に彼は泣きそうな顔でこう言った。
「あの、この漢字なんだよ!俺漢字よめないから何書いてあるかわかんねえんだよ!」
私はこの彼の質問に地球の底が抜けるほど唖然として思わず叫んだ。
「お前そこから教えなきいけねえのかよ!」