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一月も今日で終わりですのでその締めくくりとしてかけうどんの美味しい食べ方をご紹介します

 皆さん、初詣では何に願をかけましたか?受験、就職、恋愛、結婚、離婚、慰謝料。いろいろあると思います。私はやっぱりうどんに願をかけました。奇跡の天かす生姜醤油全部入りうどんがもっと世に知られるようにと。

 天かす生姜醤油全部入りうどん。このうどん史上最もエポックメイキングなうどんは空海がうどんを日本に伝えてから約七百年後の戦国時代に突如現れた日本史上最大の革命家織田信長によって誕生しました。天かす生姜醤油全部入りうどんが生まれたのはあの桶狭間の戦いの時でした。今川義元との決戦を控えた前夜。流石の信長も死を覚悟して寝ずにずっと月を眺めていたそうです。その時ずっとかわいがりをしていた前田犬千代、後の前田利家がうどんを持ってきました。彼はうどんのおつまみに南蛮から習った天ぷらの残りの天かすと生姜と醤油をセットにしてつけていました。ですが犬千代はそこで大失敗してしまったのです。彼はまずうどんを信長に差し出し、続けて殿おつまみですと天かすと生姜と醤油を差し出そうとしたのですが、誤ってそれらを全部うどんに落としてしまったのです。

 ああ!なんという事でしょうか。最後の晩餐のうどんは天かすと生姜と醤油のせいでもうぐちゃぐちゃです。頭に来た信長はこの犬っコロめと刀を手に立ち上がって犬千代の首を刎ねようとしました。ですが刃先と犬千代の首が0.000000000000000000000000000000000000000000000000001ミリまで近づいたその時です。信長はふと目に入ってきた月夜に照らされたこの天かす生姜醤油でぐちゃぐちゃになったうどんを見てハッとしたのです。このぐちゃぐちゃのまるでゲロみたいなうどんはまさに戦国の世そのものではないか。そしてよく見るとうどんの上に山盛りに降りかかっている天かすはまるで山上に立つ絢爛たる巨城に見えるぞ。これはもしかして天下人が召すものではないか?ならばこれを食らうのはこの信長を置いて他にない。若き日の天下人織田信長はその才で一瞬にして天かす生姜醤油全部入りうどんの全てを見抜いたのです。信長は天下を喰らわんと箸を手に取り一気に天かす生姜醤油全部入りうどんを啜りました。中国から渡来したうどんと南蛮から伝来した天ぷらから生み出された天かす。その天かすを彩る生姜と醤油。信長はきっと天かす生姜醤油全部入りうどんを味わい尽くしながら天下を取る決意を固めたでしょう。

 天かす生姜醤油全部入りうどんを食べ終えた信長は犬千代に扇を持って参れと命じ、そして犬千代から扇を受け取ると謡曲『大盛り』を舞いました。この人生五十年、うどんは太麺という自身の運命を象徴する謠を舞いながら、信長はこう思ったでしょう。俺はこの天かす生姜醤油全部入りうどんに相応しい天下人となって絶対に大盛りの天かす生姜醤油全部入りうどんを食ろうてやると。こうして天下人信長は翌日の桶狭間の戦いで見事デブ麻呂の今川義元を討ち取って日ノ本中に織田信長の名を知らしめたのです。その後信長は天かす生姜醤油全部入りうどんのおかげで天下人となり、なんの実績もない凡夫前田利家も天かす生姜醤油全部入りうどんで加賀百万石を手に入れたのです。

 さてその信長が天かす生姜醤油全部入りうどんを食べて天下を取ったという話は他の大名たちにも知れ渡り、信長にあやからんと後の天下人たちも天かす生姜醤油全部入りうどんを食べました。豊臣秀吉も徳川家康も、余談ではありますがものの話によると家康は天ぷらに当たって死んだのではなく、天かす生姜醤油全部入りうどんのあまりの美味に耐えられずそのまま天に昇天してしまったそうです。その家康の後継者たちも、さらには維新の志士たちも、明治・大正の政治家たちもみな信長に習って天かす生姜醤油全部入りうどん毎日欠かさず食べたそうです。ですが昭和に入り欧米化や当時の軽佻浮薄な時勢に影響されて天かす生姜醤油全部入りうどんは急速に忘れ去られていきました。今の政治家は裏金やネット工作にご執心ですが、肝心の天下の情勢には見向きもしません。信長たち天下人のように天かす生姜醤油全部入りうどんを食べて天下を思う事はその意気などまるで持っていません。政治家がそんな状態なんですから、一般人など天かす生姜醤油全部入りうどんの事を全く知らないのです。私がどれほど天かす生姜醤油全部入りうどんこそあらゆる料理の中でトップだと涙を流して力説しても半笑いで応えるのみです。これでは日本が停滞するのも、化石のように止まってしまっているのも当たり前です。

 というわけで今から日本の停滞を打破せんとする未来の天下人のために天かす生姜醤油全部入りうどんの美味しい食べ方を教えます。未来の天下人の皆さん、メモのご用意はお済みですか?時間がないので早速始めます。

 まずはなまるうどんでかけうどんを注文して店員さんからどんぶりを乗せたトレーを受け取りましょう。トレーを受け取ったらそのまま薬味コーナーに行ってそこにある天下人三点セット、天かす、生姜、醤油を順番にかけましょう。最初は天かすです。かつて信長はこの天かすに安土の城を見たと言い伝えがあります。きっと信長はこの油で極彩色に光り輝く天かすを見て安土の城の天守閣でダイナミックに天下を動かしてゆく自らの姿を思い浮かべていたのかもしれません。これを山盛りに安土の城が輝くほどかけましょう。次に生姜です。この潤んだ琥珀色の生姜こそこの天かす生姜醤油全部入りうどんの味を城を支える石垣です。聞いた所によると太閤秀吉の息子の右大臣秀頼は太るからと天かす生姜醤油全部入りうどんを避け、挙げ句の果てに石垣の修繕まて怠っていたと言います。彼がこのように自分のプライベートな事情から、また単なる怠け癖から天下人たるものが食べねばならぬ天かす生姜醤油全部入りうどんを食べず、また城の修繕を怠った結果どうなったかは改めて語るまでもないでしょう。この要の生姜は大さじ一杯。ピンポン玉ぐらいに掬いましょう。最後は醤油です。醤油は絶対に五回まわしでかけましょう。醤油に関してはこんな逸話があります。天下人信長に謀反を起こし本能寺で彼を仕留めた明智光秀は自分こそ次の天下人だと信長に習って天かす生姜醤油全部入りうどんを食べました。彼は信長がそれを食べる姿を何度も見ていましたから似たように作る事が出来たのです。しかし光秀は肝心な所で大きな過ちを犯してしまいました。天かすを山盛りに振りかけ、生姜を大さじ一杯のピンポン玉サイズに落とした光秀は早く天下が欲しいという焦りから醤油をいい加減にかけてしまったのです。五回ではなくそれ以下かそれ以上。光秀の天下は五回まわしで醤油をかけなかったせいであっさりと終わってしまいました。光秀は死ぬ間際に自分のしでかした事を後悔したでしょう。ご縁を大事にすればよかったと。

 そんなわけで出来たのがこの天下人たちに力を与えた天かす生姜醤油全部入りうどんです。ああ!なんて美味しいのだろう!一口食べたらまるで巨人にでもなったような気分になる。天かすは口の中で溶けてまるで幻覚のように遠き昔の安土の城を垣間見させてくれる。生姜はその城を支える味の石垣だ。生姜のツンとくる潮風は私を遠き古戦場まで走らせてしまう。そして醤油は全ての天下人を目覚めさせる猛々しい血潮そのものだ。私は五回まわしの醤油で神や仏ともご縁を持った天下人となりて今すぐにでもいつまでも古き日本を天下統一したくなる。

 あっ、興奮のあまりいつの間にか文体まで変わっていました。とにかく日本に革命と変革を実現したいと願うあなた。願うよりも天かす生姜醤油全部入りうどんを食べて夢の実現のために行動を起こしましょう!今日はこれでおしまいです。ではこの辺で、ちゃお!

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