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戦うことをやめる

戦うことはもうやめた。戦い続けても虚しいだけだ。人は一体なんで戦うんだろう。
 戦って勝利して何を得るのか。人を傷つけて得た勝利に何の意味があるんだろうか。
 勝鬨に酔いしれる僕の下には無数の敗者が倒れている。あるいは敗北した僕を勝利者が傲然と見下ろしている。
 勝者は敗者を讃えたりなんてしない。ただ憐れむだけだ。一番を争って栄光を掴んでもそんなもの一瞬にして過去のどうでもいい思い出にしかならない。短い人生の中で僕らはただひたすら栄光を求めて戦い続ける。野生動物みたいに生きるためじゃなくてただ一瞬の栄光に浸るために。
 僕はそれがもう嫌になったんだ。儚い栄光を求めて人を傷つけるなんて耐えられない。今日からもう僕は戦わない。何をしようが人と争ったりしない。
 世界では今リアルな争いが起こっている。実際に人が人を殺し合う勝利と栄光の惨めな陰画。僕らのやっている戦いもそのリハーサルに過ぎない。
 なんで僕たちは戦い続けるんだ。そんな事をしても待っているのはボスザルみたいな惨めな老後じゃないか。
 だから僕はここに誓うよ。僕は二度と戦わない。今日が僕の終戦記念日だ。


「おい、まだ出てこないのかよ。お前もう試合の開始時間とっくに過ぎたんだぞ!チャンピオンも待ってんだぞ!お客さんなんかお前が遅いってリングにビンとか尿瓶とか刃物とかいろんなもの投げ込んでるぞ!いいから早く出てこいよ!」

「待ってくださいよ。僕はチャンピオンさんと戦う気なんてないです。その事はさっきnoteに書いたんで読んでください。そこに僕は戦うことの虚しさについて書いてますから。それでは失礼」

「ふざけんじゃねえ!お前このタイトルマッチにどんだけ金かかってるのかわかっているのか?オラ行くぞ!あのフィリピンの種馬に今から思いっきり殴られてこい!」

「うわ〜ん!戦いだぐないよぉ〜!」

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