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【短歌】悲願花
誰そ彼と一途に咲きしひがんばな一目見たいと焦がれるは
【赤の物語】
赤い花が咲いていた。
街角にある小さな駐車場。
その片隅に彼岸花が並んでいる。
長さの違うりぼんのような、紅の花。
鮮やかで美しいのに、何かが足りない気がする。
私は、足を止めてよく観察してみた。
何が足りないか、わかった。
この花には、葉がない。
スマホを取り出して彼岸花について調べてみた。
どうやら、彼岸花は花が散った後に葉をつけるらしい。
不思議な花だ。
早く咲いて会いたい人がいるのだろうか。
花しかないから、少し寂し気に見える。
でも、きっとそれでもいいと思って咲いているのだろう。
一人になってしまってもいいと覚悟して、
それでも葉を待つこともなく、
孤独に風に揺られる花。
悲しいほどに会いたい人がいる花。
ひがんばな。
誰そ彼の空さえも、彼岸花の赤に適わない。
誰に会いたくて咲くのだろう。
秋らしく、涼やかな風が私と彼岸花の間を通った。
彼岸花が、困ったように首を傾げて揺れた。
情熱的な赤にその身を染めて、
葉を置き去りにしてしまうほど、
あなたが会いたいのは、
誰?
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