大好きな本を語る 辞典
「好きな本はなに?」
そう聞かれて私がすっと差し出す本が、辞典でもいいでしょうか?
1 好きな本は、美しいことばの入り口
なぜ「ことば」はこんなにも人の心を引き付けるのでしょうか。
文章でさえない「単語」に、意味が理解できない「言語」に、美しさを感じることがあります。また、美しい響きや話してみたくなる発音に憧れることがあります。
今回私が語るのは、そんな美しいことばを綴る1冊の本です。
辞典といっても、難しいことばがびっしり書いてあるようなものではありません。
全てのページが、美しいです。
ページをめくると、装飾された美しい世界と、ことばに浸ることができます。私はこの本を読むと、アイディアが浮かんでくる気がします。
―この言葉使いたいな。
―こんな表現があるんだ!
―前に見た空の色、きっとこの色だ!!
そんな、アイディアの泉のような本。
今回も、語らせてくださいな。
※今回語るのは辞典です。語る際、ことばの解説はネタバレになってしまうので、語りません。美しい解説をされた時に私が感じたことを、思い切り語っていきます!!
2 大好きな辞典
準備はよいでしょうか???
発表します!!!!!
私が大好きな辞典は、、、、、、
『光と闇と色のことば辞典』
著・文献学者 山口謡司さん
色監修 桜井輝子さん
絵 飯田文香さん
美しい色使いと文章の中に、美しいことばが眠っている辞典です。
単行本サイズなので、手に取りやすいです。
ページも多くはありません。
本文は、光と闇と色を表す言葉が、素敵な絵と共に収録されています。ランダムに選んだページをぺらりとめくって読むだけで、新たなことばを知って、世界の色彩が豊かになったように感じます。
ことばと絵が生み出す世界に圧倒されながら、美しい言葉に浸ることができる、素敵な本なのです。
3 ことばの重み
この本の構成は、いたってシンプルです。
『光のことば』『闇のことば』『色のことば』の3章。
ことばの解説は、長くはありません。
しかし、それが想像の幅を生み出してくれます。
そしてこの本の、ことばが解説されているページに、日本画が描かれているのです!!
知っていることばも知らないことばも、美しい絵と一体化して解説されます。その絵がまた、一つひとつの言葉の意味を想像させ、ことばの重みを引き立ててくれます。
「この一言を使って、文章を書くのなら、どんな物語が生まれるだろうか。」
そんなことを考えながら、私はこの本のページをめくります。
特に、闇にまつわることばのページは、私を圧倒しました。
ページ全体が重く沈んだ場所にいるような、どろりとした闇の中に、闇を表す言葉が綴られていました。そのページに、闇の深さを、闇の重さを感じたのは、気のせいではないでしょう。
4 大事にしたい言語
ことばの美しさは、『共に生きるようとする者たちの美しさ』でもあるのだろうと思います。
人は人、自分は自分です。
どれほど同じ環境で生きようと、
どれほど近くで過ごしていても、
自分はたった一人しかいない、「個人」なのです。
ですが、「ことば」はその「個人」という線に挑むのです。
100%分かり合うことはできなくても、
共有することはできる。
100%同じ気持ちになれなくても、
共感することはできる。
美しい世界を、私の、あなたの世界を、共有し合う一つの手段。
それが「ことば」なのだろうと私は思います。
私は、この本をめくるたび、この本の著者が見
ている世界が見てみたいという気持ちになります。
決して100%分かり合えないものたちが、それでも世界を共有しようとして生まれた、「ことば」。
ああ、「ことば」って素敵だなぁ。
改めてそう感じました。
あなたにもありますか?
自分の世界を彩る本が。
世界を表すことばが眠る、一冊が。