外国ルーツの人にきく [食べたら元気になるごはん] 第4回(前半)アトゥーさんの「豚肉と発酵タケノコのカレー」
インド・ナガランド州出身のアトゥーさんの「食べたら元気になるごはん」は、豚肉と発酵タケノコで作るカレーです。
来日して20年以上。
日本で結婚も、子育ても、お仕事もなさってきたアトゥーさんですが、
「週に1回くらいはこれを食べないと、元気が出ない、みたいになっちゃいます」
ナガランドのご実家では、週に2、3回はこのカレーを食べていたそうです。
カレーといっても、日本で私たちが想像する「インドカレー」とは、ちょっと違います。
調味料は、塩と唐辛子。
スパイス類は、使いません。
そして大切なのが、発酵タケノコなのです。
ナガランドはインド北東部、インドとミャンマーの間にあって、インドの他の地域とはまた違う、独自の歴史と文化を持った「ナガ」と呼ばれる人たちが暮らしているところです。
ここは日本の古来の文化に影響を与えたとされる照葉樹林帯に位置し、そのせいか食べものにも少し類似性があるようで、発酵食品も、さまざまなものがあるそうです。 *
* 参考図書 『入門ナガランド〜インド北東部と先住民を知るために』
(多良俊照著 社会評論社 1998)
「ナガランドには、納豆もありますよ」と聞いて、驚きました。
日本の納豆よりも匂いが強く、「部屋のこっちの端からあっちの端まで臭いくらい」だそうです。
さて、このカレーに欠かせない発酵タケノコ。
アトゥーさんはインドへ里帰りするたびに、発酵タケノコを持ち帰っていたそうですが、新型コロナの感染拡大のため、もう2年も帰国できていません。
仕方なく、日本のスーパーマーケットで、代用できそうなものを探したそうです。
そこで、あるものを見つけました。
何だと思われますか?
このアイディアには、唸りましたよ。
私もこのカレーが作りたくて、すぐに同じものを買いに行きました。
第4回目の今回は、インドはナガランドの「豚肉と発酵タケノコのカレー」を、日本で暮らすアトゥーさんに教わりました。
宮島アトゥー(Atouü Miyajima)さん
1972年生まれ。インド・ナガランド州出身。
インターナショナル・プレスクール教員。
CBSI(コミュニティー・バイブルスタディー・インターナショナル)日本支部のナショナル・ディレクター。
家族は牧師の夫と娘2人、猫1匹。
日本のりんごとラーメンが好き。
趣味は、「みんな驚くと思うけど(笑)」ラテンダンス。
さあ、つづきはアトゥーさんのお話で。
今回も、前半部は料理、後半部はアトゥーさんご自身のお話という構成になっています。
* * *
アトゥーさんの「豚肉と発酵タケノコのカレー」
これは、豚肉がドーン、っていう感じのカレーです。
ナガは、必ず骨付きの豚肉。
すごくよく使うんですよね。
ナガではお肉といったら、骨がついたものが好きなので。
豚肉は、「生活クラブ」というところで買っています。
いろいろ試したんですけど、ここのじゃないと、思うような味にならなくて。
たまに時間がなくて、でも食べたい、というときには、他のところで買うこともあるけど、娘たちもすぐに気がついちゃって。
「お母さん、今日は違うお肉だね」って言われる味になります。
発酵タケノコの代わりにつかうのは、これ。
メンマです。
ナガの発酵タケノコは、もっと臭いんですけど。
ストックがなくなってからは、この瓶詰めのメンマをつかっています。
これだったら、まあまあ近い味には……。
そこまで同じ味にはできないですけど、でも、まあまあ近い味になります。
この種類のメンマは、どこのスーパーにでもあるわけじゃないかな。
これは、「ロピア」というスーパーで買いました。
ナガの料理は、辛い、というのがポイントなんですね。
ほんとは唐辛子パウダーのほうが、作ったときにきれいに見えるけど、パウダーはもう終わっちゃって。
インドに帰れないから、いろんな材料が、どんどん終わってきてるんです。
こっちは、乾燥した唐辛子です。
こっちは、生の唐辛子。
ちぎってあります。
生の唐辛子を使うと、カレーにちょっと甘みが出ます。
今日はパウダーがないから、生のと乾燥のと、両方使います。
じゃあ、つくりましょうか。
* * *
「豚肉と発酵タケノコのカレー」のつくりかた
「豚肉と発酵タケノコのカレー」 材料
[→は、筆者のコメントです]
・骨付き豚肉(豚スペアリブ)1kg〜1.5kgくらい
→シンプルな料理なので、豚肉の質が重要。できたらおいしい豚肉を探して、つくってみてください。
・水 鍋に肉を入れたとき、9分目くらいの高さになる量
→水の量も大切なポイントです。多すぎるとぼんやりした味になるので、最初は少なめで、足りなければ途中で少し足す、という感じでやってみてください。
初めて作るときは、先にお鍋に肉を入れて、そこに肉の量の9分目くらいまで水を入れるといいです。水に浸かっていないところにも火が回るように、煮込んでいる間はたまに様子を見て、お鍋を傾けたり、軽くかきまぜたりしてください。
・塩 小さじ山盛り2〜3杯くらい
→塩は多め、が味の決め手になります。
・唐辛子(生の唐辛子2、3本はちぎっておく)
(乾燥唐辛子2、3本はそのまま使う)
→生の赤唐辛子は手に入れるのが難しいので、鷹の爪2、3本と、韓国食品店等で購入できる粗めの韓国唐辛子パウダー大さじ2、3杯で代用できます。
韓国の唐辛子粉は辛すぎず、甘みがあるので、ちょうどよい感じです。
・にんにく 半個くらい(つぶす)
・しょうが 大きめの1かけ(つぶす)
→アトゥーさんは毎回すり鉢でトントンとつぶしているそうですが、おろし金ですりおろしてもいいです。
・メンマ カレースプーン山盛り2〜3杯くらい
→筆者も同じものを購入してみました。名称は味付けメンマ(辣油メンマ)、台湾産でした。
・じゃがいも 1袋(5〜8個くらい。皮をむいて食べやすい大きさに切る)
→長く煮込むので、じゃがいもは大きめに切ったほうがいいです。肉とメンマの旨味を吸ったじゃがいもが最高においしいので、ぜひ多めに入れてみてください。
・チャイブ(付け合わせ、飾りにつかう。適当な長さに切っておく)
・オクラなどの野菜(付け合わせに。どんな野菜でも良い。別に塩茹でしておく)
鍋に水を少なめに入れて、火にかけます。
そこに豚肉を、ジャボン、と入れます。
そこに、生の唐辛子と、乾燥唐辛子を入れます。
つぶしたニンニク、しょうがも入れます。
塩も入れます。
塩は、ちょっとびっくりすると思うんですけど、ごはんと一緒に食べるので、たっぷり入れます。(この時点で、小さじ山盛り2杯くらい)
また後で味見をして、もっと入れるかもしれない。
ほんとに、塩はすごく入れるんです。
ごはんと一緒に食べるので、塩がしっかりしていないと。
豚肉は特に脂が強いし、臭みもあるから。
塩がしっかりしていないと、「うわっと頭にくる」味っていうのかな、なんていうのか、すぐに飽きるような、飽きやすいような味になります。
だから、塩は強めに。
このまま蓋をせずに、30分くらい煮ます。
30分くらい煮たら、豚肉の色が変わって、肉の匂いが出てきます。
鍋の中は、こんな感じ。
ちょっと匂いを嗅いでみて。
肉の匂いが出てきたでしょう?
ここで、じゃがいもを加えます。
じゃがいもは使う人も使わない人もいるんですけど、私はじゃがいもが好きなので。
メンマも入れます。
(カレー用のスプーンで大さじ2〜3杯くらい)
ここからは、鍋の蓋をします。
じゃがいもが入ったら、鍋の蓋をしたほうがいいです。
蓋を閉めないと、下にあるものはやわらかくて、上にあるものは硬い、ということになるので。
なんか、これ作ってると、ラーメンみたいな匂いがするでしょう(笑)?
その間に、チャイブを切りましょう。
これはガーニッシュ(飾り、付け合わせ)につかいます。
チャイブは、どこのスーパーでもだいたいありますよ。
ネギでもないし、ニラでもないし、その中間みたいな感じ。
インドでもよく使います。
オクラも、別の鍋で塩茹でしておきます。
あとは、30分以上煮るだけ。(中火〜弱火)
30分以上は煮ないと、特に骨付きの肉の場合は、おいしくならないです。
パッとはできないから、週末に作ることが多いですね。
実家では、週に2、3回はこの料理を食べます。
だから日本でも週に1回くらいはこれを食べないと、元気がでない、みたいになっちゃいます。
普段は、普通の日本食が多いかな。
焼き魚とか、味噌汁、野菜炒めとか。
私も仕事をしているので、夫がつくることも多いです。
実家の母は、料理はできますけど、そんなにしなかったです。
だいたいメイドさんがいて、料理をつくってくれるから。
このカレーのつくりかたは、どうやって覚えたんだったかな?
なんとなく、自分で覚えたんだと思います。
はい、できあがりました。
チャイブを添えて、
こんな感じです。
ちょっと、ごはんと盛り付けますから、味見してみてください。
ほんとは、手で食べるんです。
もし熱かったら、スプーンで食べてもいいんですけど。
よかったら、手で食べてみて。
まずじゃがいもを手でつぶして、ごはんと混ぜて、グレービーも混ぜて、お肉もそこに混ぜて食べる、というのが、いちばんおいしいです。
うちでは夫も、娘たちも、夫の両親も、これを食べるときはみんな手で食べます。
特にインドの料理は、スプーンで食べるのと、手で食べるのと、ぜんぜん違うから。
混ぜたりするときって、手で混ぜたほうが、おいしいような気がします。
これはインドの漬物で、アチャールっていいます。
カレーと一緒にどうぞ。
お肉はちょっと固いかもしれないけど、あんまりやわらかすぎると、うま味が逃げてしまうから。
ちょっと固いくらいのほうがおいしいです。
* * *
後半につづきます。