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映画『秒速5センチメートル』感想

『秒速5センチメートル』を鑑賞しました。内容に賛否両論ある映画らしいですが、個人的には楽しく視聴でしたので、感想を書いていきたいと思います。

注)筆者は現時点で書籍版は読んでいません。したがって、映画版のみの感想となります。


評価(100点満点中)とランク(S~E)

80点
Aランク

桜花抄

おそらく三部作の中で最も美しく、詩的な話だったと思います。新海作品にある映像美が最も反映されている話でもありました。貴樹と明里の関係性が淡く切なく、鑑賞している視聴者の心を揺さぶっていきます。ストーリーもですが、カメラワークや構図も素晴らしく、アニメーションでありながらリアルな世界が展開されているのかと錯覚させられました。ある種この「美化されたリアル」が鑑賞者の関心を掴むのに効果的なんだなと思いました。また、各声優さんの息遣いを交えたセリフの一つ一つが真に迫っていて、感動的な物語に花を添えていました。

コスモナウト

澄田花苗は種子島の高校生ですが、彼女は都会から越してきた貴樹にそれまでの同級生の男子生徒とは違う雰囲気を感じ、そこで恋に落ちます。花苗自身、進路のことや思春期特有の悩みなどが重なり、” ここにはない何か ” を求めていたのかもしれません。貴樹の様子は、どこか普通の生徒とは違う憂いを帯びていて、そこに花苗は惹かれているわけですが、同時に大人びた彼に釣り合わない自分に嫌悪感を抱いています。そういうところが花苗というキャラクターの魅力を際立たせていると感じました。花苗の逡巡は、鑑賞者に自分のこれまでの人生と重なり合わせ、共感させる装置として作用しています。そうして物語に鑑賞者自身を溶け込ませるのです。ここが上手い描写だと思いました。あっぱれです。

秒速5センチメートル

初見で一番思ったこと → 「貴樹モテすぎだろ!!」笑
貴樹モテすぎですね。貴樹が社畜しているところが共感できました。会社員になり、組織の一員としてただひたすら働く貴樹の表情からは、かつて詩的な生活を送っていた面影はありません。そこにあるのは疲れ、鬱屈とした表情だけ。水野理紗という女性ともお互い歩み寄れず、別れを切り出されます。明里のことが頭から離れないでいながら、それでも他の女性とつき合うことで、自分の中に憧憬として残る明里の姿を打ち消そうとしていたのかなって思いました。それでも結局明里を忘れられない。あの中学生の頃の思い出は彼の心の中で燻り続けているのでした。一方で明里も貴樹とは違う男性と付き合い続けているわけですが、たとえ結婚しても、桜花抄で貴樹に渡すことのできなかった手紙を持ち続けているわけです。夜、街中を男性と笑顔で歩いていた彼女にも、確かに忘れることができない思い出が残り続けていたのだと思います。NTRだなんだと言っている人はここの描写を見てどう思っているのか気になりますね。

キャラクター寸評

・遠野 貴樹
主人公。モテ男。憂いのある雰囲気で女を落とす?魔性の男。行動力があると思わせつつも、ヘタレな一面も見せる。

・篠原 明里
ヒロイン。一部ファンからビッチと言われがち。一番好きなキャラクター。我慢強く良い子なのが伝わってくる。

・澄田 花苗
ヒロインその2。元気っ子。恋も悩みも多きお年頃。友達多そうなタイプ。

・水野 理紗
貴樹の元カノ。映画ではあまりにセリフ数が少なくて寸評が難しい。声優さんと同じ名前。

まとめ

極めて詩的な映画でした。小説版をまだ読んでいないので、これから読んでみたいと思います。

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